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薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第3節
55/159

50.森の洞窟 その5

「あの壁の向こう、ちょっと明るいみたい」


 曲がりくねった通路の先に明かりが漏れているのが見える。

 持っていた簡易たいまつは、かなり弱々しい光になっていた。

 よく見ると、たいまつに付けていたキノコが萎びかけている。

 これ、発光するのにキノコの栄養を使っているのかも?

 今の状態からすると、あの場所までギリギリ持つかどうかというところだ。

 迷っている時間は無い。

 私は光の方に向かって足を速めた。


 曲がり角に着いた時には、キノコはすっかり萎びて光を失っていた。

 うーん、この状態で薬を作っても効果あるのかなぁ?


「まあいいや、あとで考えよう」


 考えていても仕方ないし、とりあえずバッグに突っ込んでおこう。

 明かりはこの先から漏れているみたい。

 いきなり魔獣と対面したら怖いし、先ずは中の様子を見ないと。

 岩陰に身を隠すように中の様子を伺ってみる。


(前よーし、左よーし、右よーし、上よーし)


 小声で指差し確認を行う。

 うん、魔獣はいないみたいだ。

 中は人工的な作りになっていて、ギルドの地下にある秘密の部屋に似ていた。

 違うことがあるとすると、部屋の中央に台座があるくらいだ。

 台座の上には、小さな箱が置いてある。

 こういうところにあるものっていうと・・・お宝とか?!

 さっそく調べてみよう!と思ったが、疑惑が頭の中を過る。


「これ、罠とか無いよね・・?」


 こういうものって、大抵は罠が仕込んであったりするものだ。

 よし、冷静に分析してみよう。

 箱の大きさは手のひらサイズで、鍵・・は無いみたい。

 金属っぽいけど、見たことのない材質だ。

 開けたらガバーっ!ってきたら嫌だから、ちょっと振ってみよう。


 カラコロカラコロ。


 なんか、予想以上に軽い。箱も中身も。

 これ、本当に金属なのかな?

 うーん、このままだとこれ以上は分からないや。

 中のカラコロしてる音も気になる。


「・・・ええい、ままよ!」


 思い切って箱を開けることにした。

 箱の中には、数個の丸い物が入っていただけだった。


「これは・・・種?」


 なぜこんなところに?

 というか、宝箱に種とか意味がわからないんだけど?!


「キューイキューイ!!」

「え、これ食べたいの?でも、お腹壊したら大変だしダーメ!」

「キュキュー!!」

「あ、こら、ダメだって言ってるでしょ!あっ」


 ユリが飛びついてきて、思わず種を一粒こぼしてしまった。

 その一粒をユリが食べてしまった。


「あーもー、ぺっしなさい、ぺっ!」

「キュキュ・・・」

「ほら、言う事聞かないからー・・・」


 ユリの様子が少しおかしい。

 薄っすらと緑色に発光している。

 徐々に光が強くなり、部屋全体をまぶしく照らす。


「まぶしっ!」


 まぶしさで、思わず顔を覆ってしまった。

 世界が真っ白になったあと、次第に光が弱くなっていった。


「もー、今のなんだったんだろう?」


 ユリが種を食べたと思ったら、急に光出して・・・


「そうだ、ユリ!ユリはどうなったの?!」


 さっきまでユリがいたところにその姿は無い。

 もしかして、今ので消滅してしまった、なんてこと無いよね?!


「ユリー!ユーリー!!」

「ようやく会えましたね」

「だ、だれっ?!」


 声は私の後ろの辺り、箱のあった台座の方から聞こえる。

 ゆっくりと振り返ると、そこには薄緑色の服を着た女性が立っていた。

 体は薄っすらと透けている。

 もしかして・・・おばけぇぇぇぇっ?!


「わ、あわわわわわわっ!!」


 私は驚いて、その場にひっくり返ってしまった。

 胸に当てた手がバクバクと波打っているのを感じる。

 そんな私の様子を気にすることなく、尚もおばけ?は会話を続ける。


「私はこの世界を見守るもの。あなたたちが精霊と呼んでいるものを束ねている者です」

「精霊を束ねる?それって王様みたいなものですか?」

「・・少し違いますが、そう捉えてもらっても構いません。今まであなたを呼んでいたのは私です」


 少し落ち着いてきた。

 よく聞くと、夢の中で出てきた女性と同じ声がしている。

 ということは、彼女が精霊の王様なのだろうか?

 だとすると、この旅の目的が何か分かるかもしれない!

 もちろん、他にも聞きたいことは山ほどある。


「あの・・・」

「申し訳ありませんが、あまり時間が無いようなので手短に用件だけお伝えさせていただきます」

「時間が無いって?」

「詳しくは話せませんが、一緒にいた精霊の力を借りているからです」


 一緒にいた精霊・・・ってユリのこと?!


「そうだ!ユリ・・ユリはっ?!」

「心配ありません。私が消えれば戻ってきます」

「そう・・良かった」

「用件ですが、あなたには世界の歯車になって、この世界を正しい方向に廻してもらいたいのです」


 世界?歯車?廻す?

 いまいち、いや全然分からないんだけどっ?!


「それってどういう意味ですか?!」

「言葉の通りです。この世界は歪み始めています。それをあなたに直してもらいたいのです」

「直す?私、そんな力なんて無いよっ?!」

「これからあなたに力を与えます」

「力・・?」

「この力は危険です。ですからあなたが力を得るのに相応しいと思ったときに少しずつ与えようと思います」

「そんな危険な力なんていらないよ!」

「それでもこの世界にとっては必要なことです。今のあなたにはこの魔法を授けましょう」

「魔法?今、魔法って言った?!」

「はい、あなたにとっては”二つ目”の魔法です」


 ・・・二つ目?

 私、魔法なんて何も覚えてないよ?!

 目の前では、精霊王が手に緑の光を集めている。


「わー、きれい・・・」


 光の玉はさらに大きくなっていく。

 いや、こちらにゆっくりと向かってきている?!

 この距離では避けられないっ!!


「わ、わわっ!」


 光の玉は私を包み込むと、ゆっくりと中に入っていった。

 よく分からないけど、体に異常は無いみたい。


「な、何ともない・・・?」

「今あなたに授けたのは、”豊穣の手”という魔法です」

「豊穣の手・・?」

「それは緑を育む魔法です」

「・・・緑を育む?何のために?」

「その手で緑を育て、その恵みを受け取り、魔法を育てなさい。全ては始まりの種を実らせる為に」

「始まりの種?」

「それから封印も一つ、解除しておきましょう」

「封印?」


 再び精霊王の手に光が集まる。

 こんどは白い光だ。

 さっきと同じように私を白い光が包み込む。

 今度も体に異常は・・・いや、何かは分からないけど、違和感を感じる。


「あのっ、私どうしたらいいんですかっ?!」

「考えなさい、全ては・・・」


 何だか精霊王の様子がおかしい。

 さっきよりも姿が薄くなり、少しユラユラと揺れている。


「つぎ・・山・・・」

「え、山?山ってどこの?!あっ」

「キュ~」


 私が質問する前に精霊王は消えてしまい、後にはユリの姿が残されていただけだった。

 色々なことがいっぺんに起きすぎていて、頭の方の理解が追い付いていない。

 いつもなら、ミラが私に分かりやすく説明してくれていたっけ。

 でも、今は私しかいないんだ。

 それに、精霊王もさっき”考えなさい”って言っていた。

 そういえば、私ってあまり自分でちゃんと考えたことってないかも。

 ずっと誰かに頼りっきりっていうのも良くないよね。

 よし、ちょっと整理してみよう!


 えーと、世界とか歯車とかは何だかよく分からないけど、この世界がおかしな方向に進んでいるっていうことなのかな?それを正すのが私の使命ってことで合ってるだろうか。

 正直、世界なんて言われてもいまいちピンとこないけど・・・。

 次に魔法だったっけ。

 それと一つ目の魔法っていうのが何か分からないけど、二つ目は緑を育てる魔法の話だったかな。

 話の感じからすると、植物を育てて収穫すればいいのかな?

 それって畑でも作れって意味?

 でも、植物を育てるのが危険っていうのは意味が分からない。

 あと封印とか言っていたけど、これもよく分からないな。

 でも何だろう、さっきから体中を魔力が駆け巡っているような不思議な感じだ。

 もしかして、今なら魔法を使えるんじゃない?

 試しに明かりの魔法を使ってみる。

 バチッ、バチバチッ!

 両手の間に光が現れた。


「あ、なんか出来そう?!」


 パシューン!

 そのまま光の玉は弾けてしまった。


「あーあ、もう少しだと思ったのに。でも、見える形になってきたからもう少し頑張ればいけるかも?!」


 何度か試してみると、光が集まっては弾け、また集まっては弾けの繰り返しだった。

 結局ちゃんとした形にはならなかった。

 これ以上は時間の無駄かもしれないから、また今度にしよう。

 最後に言っていた山っていうのがどこの山の話かは全く見当もつかない。

 各地を巡って探すしかないのかなぁ・・・。


「キューイキューイ!」

「どうしたの、ユリ?」


 ユリが飛び跳ねている先に、通路の続きがあるようだ。

 いつまでもここにいて考えていても仕方が無い。

 だったら、今は先に進もう。

 台座の上にあった種の入っている箱をバッグに入れる。

 先の通路はぼんやりと光っているので、明かりは必要なさそうだ。


「じゃ、行こうかユリ!」

「キューイ!」


 私たちは再び通路の先を目指して進み始めた。


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