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薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第3節
43/159

38.魔獣討伐作戦開始!

「そろそろ門が見えてくるはずなんだけど、おかしいなー」

「柵しか見えないね~」


 方角は間違っていないはずなのに、外周の柵しか見えない。

 しかし、柵に近づけば近づくほどその一部に違和感を感じてくる。

 あれ?あの柵の一部ってなんか手前にない?

 柵の近くまで来るとその違和感の正体を理解した。

 大きい。すごく大きい。ものすごーーく大きい。

 後ろにある門が見えないくらいだ。

 これはちょっと、いやかなり大きすぎではないだろうか? 


「お、主役のお出ましか」


 柵の向こうから聞き慣れた声がする。


「お待たせしました、ブレンダさん」

「こっちは見ての通りだ。そっちの準備はどうだい?」

「今、冒険者の人たちに大釜を運んでもらっているのでもうすぐ始められます」

「そうか。門のすぐ向こうにヤツがいるから、あまり近づかないようにな」


 少し離れたところから門の方に目を向ける。

 門の手前には木材やら石が無作為に積んであるようだ。

 その隙間越しに、丈夫そうな木でできた門の一部に亀裂が入っているのが見える。

 もしかして、魔獣が体当たりでもして壊そうとしたんだろうか?

 噛まれるのはもちろん、体当たりされただけでも致命傷になりかねないってことだよね?


「おーい!」


 通りの向こうからこちらを呼ぶ声がする。

 こちらも聞き慣れた声だ。


「こっちです、ギルさーん!」

「おぅ、嬢ちゃんがなんか面白いことやるって聞いたぞー?」

「面白いって、どれだけ変な伝わりかたしているんですか?!」

「んー、魔獣の鼻を殴ってへし折るとか、猛毒を浴びせて気絶させるとか、そんな感じだな」

「そんなことしませんし、出来ません!」

「なんだ違うのかい?まあ何にしても、あの魔獣をなんとかするのには間違いないんだろ?」

「そこだけはちゃんと伝わっているんですねー・・」

「まあみんな嬢ちゃんには期待しているからな。他にも手伝えることがあったら言ってくれ」

「はい、その時はよろしくお願いします」


 さて、大釜も届いたし、いっちょやるかー!

 おっと、鼻と口を布で覆うのを忘れてた。

 みんなに言っておかないと、戦う前から戦線離脱しちゃうからなぁ。


 準備ができたところでポーションモドキ改め、対魔獣用アレを作り始める。

 アレを煮詰め始めた頃、ちょうどエリスさんが小瓶を持ってきてくれた。

 水分が少なくなり、徐々にグツグツと煮詰まっていく音がする。

 そろそろ煙の色が・・・変わった!

 火を消して中身の一部を小瓶に詰める。

 私・ミラ・ブレンダさん・ギルさん、それに少し戦えそうな冒険者の一部に小瓶を配る。

 残りのアレは、柵の前に直接置いて・・・って、大釜をそのまま置いてたら不自然すぎて罠にならないじゃない!ここまできて、私は何やってるんだ!


「その残りって、罠用だろ?柵の前に一段低くして木枠を置いてあるからそこに流してくれ」

「あ、はい。ありがとうございます」

「まさかそのまま置くつもりじゃないよね?」

「あははー、まさかー」

「まぁ、それならいいけど急いでくれよ」

「了解です」


 私が抜けていることはバッチリ読まれているなぁ。

 とりあえず、これで一通りの準備はできた。

 罠の再確認と攻撃組・防衛組に分かれて最終打ち合わせをする。

 私たちは当然攻撃組だ。

 まぁ、言い出しっぺが防衛側に入ったら無責任すぎるしね。

 こちらの流れはこうだ。

 まず門を開けて魔獣を誘い入れる。

 すると目の前に柵があるから止まろうとして、手前のアレの池にボシャン!

 鼻をやられたところにネットで捕まえ、後はみんなでボッコボコにして戦闘不能にさせる!

 ・・・ってこれ、作戦っていうんだろうか?

 とは言っても、初心者に毛が生えた冒険者と村娘のできそうなことなんてこのくらいが限度だよね。


 全員が配置に着き、門を開ける準備をする。

 ごくり。

 作戦前の異様なほどの静けさの中、心臓がバクバクしてるのが耳に入ってくる。

 ヤバい、すごい緊張してる。おまけに変な汗が出てきた。


「だいじょ~ぶ?」

「あ、うん。心臓バクバク言ってるけど何とか」

「えーと、こういう時は深呼吸だっけ~?」

「そーだね、吸って―、吐いてー、吸って―、吐いてー」

「そーれ、ひっひふー、ひっひふー」

「それ、なんか違う気がする!」

「そうだっけ~?」

「あはは、なんか馬鹿らしくなって緊張ほぐれたよ。ありがと、ミラ」

「どういたしまして~」

「絶対勝とうね」

「モチのロンだよ~」


 門を閉じている最後の木材が退けられ、ゆっくりと門が開き始める。

 もう後戻りはできない。

 さあ、来るなら来い!



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