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薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第3節
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31.意外な伏兵?

「うーん、何だか外が騒がしいなぁ・・」


 私が目が覚めたのは時間だからではなく、窓の外から聞こえる大声のせいである。

 何かを叫んでいるみたいだけど、朝から喧嘩?


「ふぇ?もう起きる時間~?」

「うーん、誰かが外で叫んでいるみたいなんだよね」

「むぅ~~、めいわくぅ~だめぇ~、はんた~い!」


 ミラは拳を掲げたまま、右にゆらゆら左にゆらゆらと揺れている。

 ちょっと寝ぼけているっぽい。

 とりあえず、窓から覗いてみよう。


「おー、いたいた。な、言った通りだろ?」


 顔を出すや否や、大きな声が耳に入ってきた。

 思わず顔を引っ込める。

 しかし、人の顔を見て”いたいた”なんて失礼な事を言う人と知り合いになった覚えなんかない。


「あれ~?あの人ギルドにいた毒草の人じゃないの~?」


 いつの間にか窓辺に立っていたミラが言う。

 そう言われるとそんな感じだったような?


「薬草の嬢ちゃん、まだ薬草集めてるんだろ?!」


 確かにそうだけど、持っているのは毒草って分かっているし新しく取りに行けるわけもない。

 時間の無駄かもだけど、このまま大声出されるのも迷惑だ。

 仕方ない、対応しよう。

 

「はい、まだ集めてますけどー?」

「おう、みんなまだ大丈夫だってよ」


 ん、今みんなって言った?

 窓から身を乗り出して下の通りを覗いてみる。

 そこには十数人の冒険者たちがいた。

 もしかして、まだ薬草を持っている人を探して連れてきてくれたのだろうか?

 とにかくチャンスが転がり込んできてくれたんだから、最大限生かさなきゃ!


「急いで準備するので、ちょっと待っててください!」 


 とりあえず、急いで服を着替えてから髪を整える。

 あとお金とバッグも用意しないと。

 ああっ、顔を洗うの忘れてた!

 ぺちょん。

 ふと、頬に冷たいものが当たる。


「はいタオル~。ちゃんと濡らしてあるよ~」

「ありがと!」


 タオルで顔を拭いたあと、ミラに渡す。


「ちょっと行ってくる!」

「は~い、いってらっしゃ~い」


 急ぎすぎて途中、階段で(つまづ)きかける。

 ふぅ、あぶないあぶない。


「おまたせしました!」

「おう、こっちこそ朝早くからすまんな」

「いえいえ。で、後ろの方たちは?」

「ああ、みんな嬢ちゃんに用事のある奴だ。なんてったって、今町中でちょっとした有名人だからな」


「はぁ・・」


 そう言われても心当たりが無いんですけど。

 一体どんな話が町中で飛び交っているんだろうか?


「じゃあ一人ずつ対応しますので、順番にお並びください」

「だったら俺が最初だ!俺がこの中で一番強いからな!」

「いやいや私のほうが先だ!なんといってもこの中で一番年上だからな!」

「いーや、ワシが先だ!なんてったって無一文だからな!」


 みんな口々に自分が我先にと理由を付けて言い合いを始める。

 寝起きでコレはさすがにイラっとくる。


「おい、みんな静かにしろ!俺が声掛けた順番で並べ!嫌な奴は勝手に飢えてろ!」


 冒険者たちは”チッ”と軽く舌打ちしながら渋々私の前に並ぶ。

 いい加減な人かと思ったら、思った以上にちゃんとした人だった。

 感謝!


「じゃあ、嬢ちゃん頼むわ」

「ありがとうございます」


 最初はちょっと線の細そうな人だ。


「あの、あなたが薬草の買取と鑑定をやってくれるって聞いたんですが・・」


 ん?

 薬草の買取をしてるとは言ったけど、鑑定って?!


「えーと、買取はしてますが鑑定はしていないです」

「鑑定してくれないんですか?」


 あー・・これは間違った噂が流れているっぽいなぁ。


「多分、鑑定ではなく査定じゃないかと」

「それって何か違うのかい?」

「全然違います!」

「まあいいや、で買い取ってくれるのくれないの?」

「とりあえず、品物を確認させていただきます」


 この感じだとこの後ろの人たちも何か勘違いしてるんじゃないだろうかと不安になる。


「では次の人どうぞ」

「私の番だな。他の冒険者から聞いたのだが、嬢ちゃんが薬草について詳しく説明してくれるっていうのは本当かい?」


 おーい、この噂流したヤツ出てこい。

 買取の”か”の字も出てきてないよ?


「申し訳ありませんが、薬草の買取以外は行っていません」

「なんだそうなのか。あ、売れるような薬草は持っていないので失礼するよ」


 ちょっと顔が引きつる。

 冷やかしならさっさと帰って下さい!

 去っていく冷やかしの冒険者。

 ばきっ。

 あ、毒草の人に殴られた。

 『毒草塗りつけるぞ!』って感じで、毒草を見せつけられて走って逃げて行った。

 ちょっといい気味だ。

 それにしても、こういう人ばかりじゃない・・・よね?

 そんな私の心配も良い方向に外れてくれて、残りの人は割と普通の人たちだった。

 そして無事に最後の人との商談も終わることができた。 


「ありがとうな嬢ちゃん。これで今日のご飯にありつけるわい」

「ありがとうございました」


 今の買取で、十分な量の薬草を確保できた。

 その代わりにお財布の中身が軽い。

 うーん、ちょっと使いすぎたかなぁ。

 

「お疲れさん。もう十分そうかい?」

「ええ、おかげさまで。本当にありがとうございます」


 毒草の人がここまで協力的だなんて、正直に驚きを隠せない。

 本当にうれしい伏兵である。


「あの、お礼と言ってはなんですが、これから一緒に朝食でもどうですか?」

「いや、それには及ばん。嬢ちゃんには借りがあるからな」

「借り・・ですか?」

「ああ。あの時、嬢ちゃんが毒草って教えてくれてなかったら、知らずに食っちまっていたところだ。だから俺の命の恩人って訳だ」

「えと・・・そういえば、まだ名前を聞いて無かったですね」

「そういえばそうだな。俺の名前はギルベルタだ。呼ぶときはギルでいいぞ、薬草の嬢ちゃん」

「私はアメリアって言います。みんなはリアって呼びますけど」

「そうか、いい名前だな」

「ありがとうございます」

「んじゃ、そろそろ帰るとするかな」

「あ、待って下さい!」


 やはり何かお礼をしないと気が済まない。

 今持っているもので渡せそうなものは・・・


「あの、これ良かったら使って下さい!」

「ん、これは?」

「自家製の傷薬です。正式なものでは無いのでお店で売れませんが、効果は保証します!」

「ふむ、薬草も持っていないしありがたく貰っておくか。ありがとう嬢ちゃん」

「こちらこそ、本当にありがとうございました」

「では、縁があったらまた会おう」


 ギルさんを見送った後、部屋に戻りミラに下であったことを話した。

 さあ、リストにあった依頼品は揃った!

 ギルドに行って報告しよう!



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