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薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第3節
34/159

29.薬草回収大作戦!

「冒険者の集まりそうな場所って言えばここだよね!」


 私たちは今、冒険者ギルドに来ている。

 宿屋の店主から冒険者ギルドの場所を聞いてやってきたところだ。

 ここは商人ギルドとは違い、町や住人から依頼を受けて仕事を行う言わば何でも屋である。

 依頼も収集・討伐・仕事の手伝い・臨時の傭兵とかなり幅広くやっている。

 しかし今は平常時では無い。

 現在依頼ボードに残っている依頼書は1枚だけ。


  『(急募!)魔獣ブラッディロアーの討伐』


 依頼書には他にも、報酬額や難度などが記載されている。

 それにしても他の依頼書が一枚も見当たらない。

 恐らく長期戦を覚悟した冒険者が真っ先に確保に動いたのだろう。

 依頼ボートには無残に残った依頼書の切れ端がぶら下がっている。

 かなり壮絶な奪い合いがあったことが見て取れる。


「うーん、あんまり人がいないねぇ~?」

「すでに依頼を取り合いをして終わった後っぽいね」


 どうやら一足遅かったみたいだ。

 さっきの冒険者たちはギルドからの帰りだったのか、残っている人はほとんどいない。

 カウンターで言い争っている冒険者と隅っこで肩を落としている冒険者が数人いるくらいだ。

 とりあえず、隅っこに居る冒険者からあたってみよう。


「すみません、ちょっといいですか?」

「ん、依頼か?」

「いいえ、そうではないんですが・・」

「なら帰れ。動いても体力を消耗するだけだ」


 あっち行けとばかり手を振る。

 でもこちらも引き下がるわけにはいかない。


「あの、薬草とか毒消し草をお持ちではないですか?」

「んー、どうだったかなぁ・・」


 冒険者はゴソゴソと道具袋の中を漁る。


「ありそうですか?」

「薬草は無いけど、毒消し草ってこれだろ?」


 形は毒消し草に似ているが、微妙に葉っぱの形が違う。

 横から見ると葉っぱの形はVの字、つまりこれは毒草だ。

 しかもかなり雑に刈られたらしく、切り口が薄っすらと濡れている。


「これ、毒消し草じゃなくて毒草ですよ」

「え、そうなのか?」

「もしかして素手で触りました?」

「ああ。そうか、それで手がかぶれたのか」


 どうやらこの冒険者、毒消し草と思って毒草を取ってしまったらしい。

 こういうことは初心者にはよくある。

 店に毒消し草と思って売りに来たら実は毒草でした、なんていうのは薬屋あるあるだ。


「薬草に似た毒草って結構あるので、分からない時は手を出さないほうがいいですよ」

「ああ、そうする。ありがと嬢ちゃん」


 結局収穫はゼロ。

 肩を落としてミラのところに戻る。


「その感じだとダメだったみたいだね~」

「うん、薬草じゃなくて毒草だったよ」

「あらら~」

「他の人も同じじゃないことを祈るしかないよ」


 残りの冒険者たちにも同じように交渉を持ちかける。

 結局このギルド内で集まったのは、薬草と毒消し草が数枚のみ。

 となると、次は町中に散っている冒険者を探すしかなさそうだ。


 町中の店や食堂など、冒険者の居そうな場所を探して回る。

 保険用にと少量しか持っていない人がほとんどで、完全な物量作戦になっていた。

 ミラの言った通り、コツコツ探してジワジワ溜まるって感じだ。


 ここまで十数組の冒険者たちと交渉していて気が付いたことがある。

 かなりの人が薬草と毒草を勘違いして採取しているということだ。

 実状として、薬草と毒草を間違えて誤食してしまう食中毒事件が後を絶たない。

 内訳で言えば、その半数以上は冒険者、それも初心者に多い。

 ちなみに、初心者冒険者の死亡理由の第1位は『ピンチ時に毒草を使ってしまい、毒や麻痺している状態から止めの一撃を食らう』らしい。

 そのせいか、『最序盤の敵は毒草』なんて言われている。



 本当にみんな薬草に対する意識が薄い、薄すぎるよ!

 いっそ私が薬草協会でも作ってしまおうかっていうくらいだ!

 密かな野望を胸に再び戦場(?)へと向かうことにした。


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