27.夢再び、そして招かざるもの
暗い闇の中、旅立ちの日に聞いたあの声がする。
――ー木々の悲鳴の近く
――ー太陽から見放された場所
――ー光る・・・を目印・
―――隠された・・・を・・・て
今度こそ、この声の主が誰なのか確かめなければならない。
「あなたは本当に誰なの?!」
しかしやはり返答は無い。
この会話って一方通行で、こっちの声なんか聞こえていないんじゃないの?
――ーあと少しで・・・よ
今回は返事というか反応があった?!
でも全部は聞き取れなかった。
ふと後ろから掴まれたように、闇の中から引きずり出されるような感覚がする。
「待って!まだ名前も聞いてないのに!」
そのまま声の主の気配が消えた。
「待って!」
「どうしたのリア~?お顔が真っ青だよ~?」
「え、あ、うん。何でもない、ちょっと変な夢を見ただけだから大丈夫」
「それならいいんだけど・・」
夢・・・だったんだよね?
でも間違いない、あれは村を出る時に聞いた夢の中の声だ。
なぜ今になってまた?
また何かを伝えようとしていたな。
せめてちゃんと聞き取れれば目的の場所も分かりそうなのに!
「今日は周辺の探索予定だったけど、調子悪そうなら一人で行ってくるよー?」
「ううん、大丈夫だから一緒に行こう」
「ホントに~?でも辛くなったら必ず言ってね~」
「うん、約束する」
昨日の食堂で朝食を軽めに済ませた後、町周辺の探索に向かうことにした。
村の出入り口に向かうと冒険者が溜まっているのが見える。
外出の手続き待ちだろうか?
いや違う、冒険者と門番が揉めているみたいだ。
「おい、外に出られないってどういうことだよ?!」
「今朝、村の周辺で普段出ないような危険な魔獣が出たんだ。討伐隊が到着するまで低レベルの冒険者達には村での待機命令が出されたんだ」
「そんな奴、俺たち全員で掛かればあっという間に片付けられるぜ!」
「いやダメだ」
「俺たちじゃ弱すぎるってか?!」
「なら教えてやる。出てきた魔獣はブラッディロアーだ。この意味が分かるな?」
魔獣の名前が出されると冒険者達は一斉に静かになる。
聞いたことのない魔獣の名前だ。
というよりは、私たちは冒険者じゃないから魔獣の名前を聞いても分からない。
出来ることと言えば、首を傾げるくらいだ。
冒険者たちがざわめき始める。
「おい、それマジかよ・・・」
「ブラッディロアーって言やぁ、中級冒険者のパーティーでもやっと太刀打ちできるかどうかっていうヤバい奴じゃねーか!」
「なんでこんな安全そうな場所にいやがるんだよ!!」
「おい、町の中にまで入ってこないよなぁ?」
「くそぉ、狩りに行けないんじゃ今日の宿代足りねぇじゃないか!!」
「討伐隊はいつ来るんだよ!!」
みんな口々に文句を言い始める。
どうやら外に出られる雰囲気ではないようだ。
しかしそうなると、課題をどうしたらいいやら・・・
いやいや、そんなことよりも命の安全確保が先だよね?!
「ミラ~、どうしよっか~?」
「うーん、私たちだけじゃどうしようも無いよね~」
「だよねぇ・・・」
とりあえず、ギルドに行って試験期間を延ばせないか相談してみよう。
ついでに、昨日の冒険者の話も聞いてみないとね!