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薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第3節
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26.ウッドストックの食堂にて

「はあ~、これからどうしよう~」


 ギルドを出て町の中を少し探索した後、宿屋で部屋を取った。

 屋敷から出る前に集めておいた薬草類をバッグから出して中身を確認していたところだ。

 当然というか、リストの量には遠く及ばない。


「半分にも満たないね~」

「うん、全部出しても4分の1あるかどうかだね」

「探しに行くにしても、この辺りはあんまり詳しくないよ~」

「むぅ~、このままここで考えていても答えが出なさそうだし、町の周辺の探索に出てみようかな」

「そうだね、何かヒントになりそうなものがないか探してみよ~?」

「そうと決まれば探索の準備して・・・ってもう夕方なんだね」


 窓の外はすっかりオレンジ色に染まっている。

 町には正午過ぎに着いたし、時間的に仕方ないのかもしれない。

 ブレンダさんは5日間と言っていたが、実質4日しかないと言っていい。

 今回はそれほど迷っている時間は無い。


 ぐぅ~。

 鳴ったのは私のお腹だ。

 ぐぐぅ~。

 今度はミラのお腹が鳴った。


「あはは、とりあえずご飯食べに行かない?」

「そうだね~、私もお腹ペコペコだよ~」

「じゃあ、お昼にいい匂いしていたあそこの食堂がいい!」

「うん、私もちょっと気になってた~」

「よし、そうと決まれば行こう!」


 私たちはギルド近くにある食堂にやってきた。

 店内は家族連れで夕食を取りに来た人やつまみを食べながら酒を飲む冒険者などで賑わっている。

 お酒と料理を運んで忙しそうにしている人が何人かいる。

 どうやらその一人がこちらに気付いたらしく声を掛けられる。


「いらっしゃいませ、お客様は何名様ですか?」

「2名です」

「では、奥の空いている二人掛けのテーブルをお使い下さい」

「はい。じゃあ行こうか」

「うん」


 空いているテーブルを見つけ椅子に座る。

 隣には冒険者らしい風貌の人たちが座っているようだ。


「ん~と何にしようかなー?」

「お昼にいい匂いさせていたのはどれだ~?」

「このリゾッティアってどんな料理だろう?」

「確か、スープでお米を柔らかく炊いたものだよ~」

「へぇ~、そうなんだ。でも、この辺りでお米って珍しいよね?」

「うん、ここの料理長の人は他の地域から来た人みたいで、私も初めて聞く料理もあるよ~」

「なんか詳しいけど、ここの料理長ってミラの知り合いの人?」

「初めてだよ~。ほら、メニューの裏にこのお店のことが書いてあるよ~」

「あ、ホントだ」


  大陸の北国出身の料理人が、あなたの舌に新しい刺激をお届けします!

  興味が沸いたら是非北国の本店もよろしくお願いします!


 あとは本店の場所やら連絡先が載っているだけのようだ。


「北国出身かぁ。ここからだと樹海を大きく回らないと行けないから、かなり遠いんじゃないの?」

「そうだね~、この周辺の樹海は抜けられないからね~」


 うちの村からこの町の向こうまで広がっている樹海は”拒絶の樹海”と呼ばれている。

 樹海には魔法か何かが掛かっているらしく、奥に向かっているはずなのに気が付いたら樹海を出ている不思議な場所なのだ。

 何か宝があると思い込んだ高レベルの冒険者も挑んだらしいが結果は同じだったらしい。

 これ以上は無駄といつしか誰も樹海の中に入ろうともしなくなった。


「とりあえず、私はこれとこれにしよう」

「ん~、私はこっちとそっちで~」


 店員さんの一人を呼び止め注文をする。

 料理が来るまでミラと話でもしながら待っていよう。


「そういえば、ここの食堂って冒険者が多い気がしない?」

「うん、うちの村よりもかなり多いね~」

「村に居た時に薬草を買いに来てくれた人もいるみたい」

「そうだね~、うちの村で鍛え終わったら次はこの町を目指すって泊まっていた人も言ってたよ~」


 改めて周りを見渡すと、冒険者らしき人が半数以上で数名は見たことのある顔だった。

 お酒が入っているのか、近くの冒険者の会話が耳に入ってくる。


「この周辺ってどうだ?」

「今の感じで狩りしていれば、もう4・5日で次の町にまでいけるんじゃないか?」

「まあそれもだけど、稼ぎの方だよ」

「ああ、魔獣狩るにしても小型過ぎて実入りが少ないよ」

「だよなぁ。俺なんかその魔獣にも逃げられちまって、飯代にも困ってる有様さ」

「だったら、そこら辺に生えている薬草でも摘んで売って金にしてみたらどうだ?」

「薬草だって?そんなもん一日摘んでたって宿代の足しにもならねーよ!」

「じゃあ野宿して、薬草でも食ってろ」

「くそ、それが嫌だから聞いているんじゃないか!」

「嫌なら前の村に戻って稼ぎ直しをするか、この町で普通の仕事をするのが堅実じゃないのか?」

「冒険者に堅実を求める奴なんかいるのか?」

「じゃあ、冒険者らしくちょっと危険な場所でも行くか?」

「こんな僻地にそんな場所あるのかよ?」

「ああ、ここだけの話だが最近見つかった洞窟があるらしいぞ」

「へぇ、お宝の匂いがするな。で、どこなんだ?」

「なんでも、村の外れにある伐採場近くにあるとか」

「それ本当なのか?」

「近々ギルドが中を調査する予定らしくてな、色々物資を集めてるなーんて話が流れているらしいぜ」

「それって最近の道具屋が品薄なのと関係あるのか?」

「さぁ?あくまでも噂止まりの話だよ」

「なんだ、ギルドが仕切っているなら見張りもいるかもな」

「だな。命懸けで行くなら俺は止めねーぜ?」

「さすがにそれは冒険しすぎだわ。命あっての物種だからな」

「違いねぇ、あっははは!」


 くぅ、また薬草の事バカにされてる!

 でも会話の中で気になる話があったな。

 村の近くに洞窟があって、どこかのギルドが調査しようとしている?

 それってもしかして・・・


「はい、お待たせしました!ご注文の品です!」


 テーブルの上に料理が並べられる。

 私の注文したリゾッティアにサラダ、それとミラの注文したパンと野菜のたっぷり入ったクリーム煮だ。


「ごゆっくりどうぞ」


 ああこれだ、お昼にいい香りをさせていたのは!


「じゃあ、いただきます」

「いただきま~す」


 リゾッティアを一口頬張る。

 鼻の奥を抜ける焼かれたチーズのいい香り!

 そこに刻まれた薬草がほんのりと爽やかさをアピール!

 ああ、食べれば食べるほど食欲が増していくっ!


「本当にリアって美味しそうに食べるよね~」

「え、顔に出ちゃってる?」

「うん、バッチリ~」

「うーん、でも美味しいから仕方ないかー」

「一口貰ってもいい~?」

「もちろん!それで、ミラに覚えてもらって私がリクエストする!」

「あはは~、これは頑張って覚えないとね~」


 食事を終える頃には、家族連れの最後の一組が会計を済ませて出ていくところだった、

 残っている人のほとんどはお酒が入っている人らしく、食堂と言うよりは酒場のようになっていた。


「そろそろ出よっか」

「うん、お会計済ませて宿に帰ろう~」


 いざとなればミラが何とかしてしまいそうだけど、無暗に(いさか)い事を起こす必要もない。

 私たちは会計を済まして宿に戻ることにした。

 外に出ると辺りは暗くなっていたが、町の灯りが多いせいか星はあまり見えない。

 まあ、道中が明るいのは悪いことではないんだけど。


「ん~、今日も色々あって疲れたねー」

「そうだね~。お腹も満足したしオネムだよ~」

「同感!今日はもう寝て、明日の朝に考えよう」

「うん、そうしよ~」

「じゃあ、おやすみー」

「おやすみ~」


 今日も色々あったけど、中でも特に気になることもあった。

 ギルドの課題と称した、大量の消耗品の収集依頼に道具屋の品不足。

 最近、伐採場辺りで見つかった謎の洞窟。

 そしてギルドが洞窟の探索の準備している。

 何かが起きているんだろうけども、一体何が起きているのかサッパリ分からない。

 明日になれば少しでも答えが見えるのかな?


 そんなことを考えながらゆっくりと意識が薄れていった。


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