25.筆記試験
「では、始めてくれ」
ぶっつけ本番はミラも同じだ。
とりあえず、やれるだけの事はやろう。
用紙の最初に書かれていた問題は、計算問題。
少し数が多いけど、内容はどれも簡単そうだ。
これなら何とかなるかも!
次の問題は、左の絵と同じものを選べ、か。
これも何とかなりそうだ。
ここからは記述式の問題みたいだ。
えーと、問題文は『あなたが商人になりたいと思ったきっかけを簡潔に答えよ。』か。
変な問題だけど、ここは自由に書いて良さそうだ。
本当の理由を書くのはマズそうだから、私個人の理由にしておこう。
今度は『あなたが商人になったら取り扱いたい商品は?』だ。
あれ、この問題も?
えーい、深く考えるのは後だ、出来るところまでやってから考えよう。
結局、最初の二問以外は全部同じような問題だった。
なんだか試験を受けたと言うより、ただの質問責めにあった気分だ。
「よし、書き終わったようだね。筆記試験はここまでだ、ご苦労さん。採点が終わるまで少しここで待っててくれ」
用紙を回収するとブレンダさんは部屋から出て行ってしまった。
「はぁ~終わった~~」
「お疲れさま~」
「なんか変な試験だったねー?」
「うん、ちょっと変わってたね~」
「でもちゃんと埋められたし大丈夫じゃないかな?」
「全部埋めるのと合っているのは、別じゃないかな~?」
「ミラ~、そんなこと言わないで~」
「なるようにしかならない、だよ~」
そうこうしているうちにブレンダさんが戻ってきた。
「待たせたな。では次は実技だよ」
「え、ちょっと待ってください!」
「なんだ?」
「あの、さっきの試験はどうなったんですか?!」
「試験?ああ、適性検査の事かい」
「適性検査・・?それって普通の試験じゃないんですか?」
「まあ試験の一つではあるが、あれは合否を問うためのものじゃないよ。アタシのギルドに入る奴がどんな奴かを知るためのものさ」
「そうなんですか」
「特に質問が無ければ次に移らせてもらうよ。アタシも忙しい身なんでね」
「あ、はい、失礼しました。続けてください」
「アンタが薬草売りとして行商したいっていうのはさっきので十分伝わってきた。だが、薬草売りだけでどうにか出来るほど商売は甘くないよ?」
「はい、分かっています」
「なるほど、覚悟の上ということか。なら、その覚悟を試させて貰うよ」
ブレンダさんはメモを私に差し出した。
文字と数字が羅列してある。
どうやら資材調達用のリストらしい。
「実技の試験はその紙に書いてある物を指定の期日までに私に収めることだ」
「これ、全部ですか?!」
「そうだ、指定の期日は5日間。この町の商人からの購入するのはダメだよ。いいね?」
「わ、分かりました!」
「では、検討を祈る」
ブレンダさんは奥の部屋の戻ってしまった。
「勢いで言っちゃったけど、どうしよう?!」
「ん~、頑張るしかないかな~?」
リストに書かれているのは、薬草とか毒消し草みたいなありふれたものだけど、問題はその数だ。
何度も見たけども間違いない、薬草300枚とか書いてあるんだけど?!
「これ、どうみても個人で集められる量じゃないと思うんだけど・・・」
「今から近くに取りに行っても集めきれるか分からないね~」
ギルド加入の実技試験は、ありふれたものをあり得ない量納品することだった。
購入はダメ、集めに行くにしても時間が足りない。
さすがに今回ばかりは無理じゃない?!
とりあえず、ミラと相談して今後の方針を決めよう。