21.領主様の課題 その10
「明日でここともお別れか・・」
少し不安で寝付けず、月を見ながら夜風に当たっていたところだった。
今夜は満月だ。
しかし、吉凶を告げると言われる赤い月である。
明日は旅立ちの日の予定だ。
思い起こせば、ここ数日はあっという間だった。
毎日草原や森で材料を集め、時には魔獣と戦い、屋敷に帰って来てはそれらを加工する。
おかげでかなりのストックを準備出来た。
暫くは困ることは無いだろう。
そう、困ることは無いはずなのになぜか不安でいっぱいなのだ。
「リア~、まだ起きてる~?」
ドアの向こうからミラが小さな声で呼びかける。
「大丈夫、入ってきていいよ」
「お邪魔しま~す」
「ミラも寝付けないの?」
「うん、リアも同じだったみたいだけどね~」
「準備はしっかりできていると思うんだ。でも、なんか不安な気持ちでいっぱいなんだよね」
「私も外の世界って初めてだから不安にはなるよ~」
「ちょっと意外かも」
「そ~お~?」
「だって、ミラならなんでも何とか出来ちゃいそうだから」
「そんなこと無いよ~?私は出来ることしか出来ないよ~」
「ミラはさ、私と違って出来ることがいっぱいある。でも、私は出来ることが少ないから心配になっちゃう」
会話が切れ、部屋の中が静寂に包まれる。
ただ、開け放たれた窓からお月様が見ているだけ。
この一瞬が何分もの長い時間に感じた。
静寂を破ったのはミラだった。
「ホントの事言うとね、村の外に行くのはちょっと怖かったんだ・・」
「どうして?」
「村の中にいる時は、周りを囲まれている感じがして安心していたの。でも、旅に出ないといけないことが決まって急に不安で一杯になっちゃったんだ」
いつもと違うミラの横顔。
月の向こう側を見ているような遠い目をしている。
「だけどリアが一緒に行くって知って、少し安心したんだ。知らない場所に行っても、リアだけは知っているって、頑張れるってね」
「ミラ・・・」
いつもニコニコ顔で、ポーカーフェイスで振舞っているけど、やっぱり不安なんだ。
私だけが不安なんじゃない。
でも二人でならきっと、この旅も無事に終えることができる。
きっとそうだ。
「私も頑張るから、一緒に頑張ろう!」
「うん」
よかった、いつものミラだ。
私自身もミラのこの笑顔に何度も助けられている。
「明日からまたよろしくね」
「こちらこそ~」
ここでの生活は明日で最後だけど、旅の始まりでもある。
私たちの旅はここから始まるんだ。
この世界は広い。
知らないことは沢山あるけど、隣には親友がいてくれる。
だから私は頑張れる。
さあ、世界に歩き出そう。
世界が私たちを呼んでいるから!




