20.領主様の課題 その9
「ということで、交易の事を聞きに来ました」
今日は朝一番に、交易の事を聞くために領主様の所に来ていた。
「なるほど、それで交易品になりそうなものを探していると」
「はい、何かありそうですか?」
「そうだな・・うちの領内で採れる薬草のほとんどは、大した金額で取引されるようなものはない」
「はぁ、やっぱりそう簡単にはいかないかぁ」
「まあ待て。ほとんどとは言ったが、全てとは言っていないぞ?」
「ということは、何かあるんですか?」
「ああ、庭でボムペッパーの実を干していただろう?」
「ええ、煙幕の材料にしようかと思って」
「薬草の中には”香辛料”という名前で料理に使用できるものがあるのは知っているか?」
「はい、お母さんから借りた図鑑にも載っていました」
「そうか、なら話は早い。香辛料は産地によって味が微妙に違うから、他の地方に持っていくといい値段で買い取ってもらえるだろう」
「なるほど~。そういうものって他にもあるんですか?」
「それだったら、私より適任者がいると思うのだが?」
「適任者、ですか?」
私以外の適任者って言ったら、ミラしかいないよね?
ん?
そういえばここに来てから毎日、ミラの作るご飯って何かしらの薬草が入っているよね。
ということは、ミラに使った薬草を聞いたら良さそう。
「その顔だと分かった、いや気付いたと言ったほうがいいかな?」
「はい、ミラのご飯は美味しいですからね」
「はは、君よりも使い慣れているんじゃないかな?」
「あはは・・・薬屋の娘としてはちょっと複雑な気持ちですけどね」
「まあ、料理に関してはミラちゃんの方が分があるだろう?」
「ええ、ミラは何と言ってもうちの村一番の料理人ですから!」
「ああ、領主としても鼻が高いよ」
「ところで領主様、一つ聞いてもいいですか?」
「なんだね?」
「領主様からの課題なのに、その、聞いてよかったんでしょうか?」
「なんだそんなことか。私は課題を出したが、相談しに来るなとは言ってないぞ?」
「まあ、そうなんですが・・」
「いいか、お前たちはこれから旅に出るんだ。知り合いが助けてくれるわけではない。先人の知恵でも何でも使って、困難を超えていくしかない。ズルかろうが、生きる為には使えそうなものはとことん使う気でいろ」
「はい、分かりました。ありがとうございます!」
「朝食ができたよ~」
「噂をすればかな」
「うん、今行く!」
「さて、今日の朝食が楽しみだな」
この3人で食卓を囲むのにも大分慣れてきた。
領主様って、少し年の離れたお兄さんって感じがする。
本当にお父さんたちと同い年なのか、ちょっと分からなくなってきた。
とりあえず、これで両方の課題に目処がついた。
これからは材料を集めたり加工したりで少し忙しくなりそうだ。
よし、ご飯を食べて今日も一日頑張るぞー!