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薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第2節
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17.領主様の課題 その6

「うーん、今日もいい天気~」

 

 ここ2日間くらいの採集で薬草類もだいぶ溜まってきた。

 上限があると言われた魔法のバッグだけども、一向に溢れるようなことは無い。

 時間があるうちに、少し整理しよう。

 うん、分かってる。

 やらなきゃいけないと思っている時に、なんとなく部屋の片付けとか始めちゃうアレだ。


「改めて見ると、かなり多いなぁ」


 机の上に仕分けした薬草が山のようになっていた。

 これがただの落ち葉だったら、焚火が出来そうな量である。


「リア~、今日は外に行かないの~・・って、なんかすごいことになってるね~」

「あ、ミラ。ごめん、バッグの中身確認してた」

「これだけあれば、売って少しお金にできそうだね~」

「それはちょっと考えてた。けど、元が薬草と毒消し草ばかりだから、多すぎて拒否されそう」

「そっか~、何か加工できればもう少し高く売れそうなんだけどね~」

「加工ねぇ・・・あ」


 村にいた時、お母さんから塗り薬の作り方を教えてもらったっけ。

 薬草と毒消し草をすり潰して油で伸ばす簡単な物で、ユリにも使った薬だ。

 傷の治りを早めるだけでなく、炎症も抑えることの出来る良薬だ。

 簡易調合道具もあるし、早速作ってみよう。


「なんか思い付いたみたいだね~?」

「うん、塗り薬でも作ろうかと思って」

「そっか~、てっきりポーションか何かでも作ると思ってた~」

「ポーションかぁ、それもやってみようかな」


 ポーションは作ったことは無いが、水薬であることは知っている。

 水で煮詰めて成分を濃いめに抽出するだけで同じような物が作れるはずだ。


「台所で試作品でも作ってみようかな」

「今なら空いてるよ~」

「ちょっと台所に行ってくる」

「爆発させちゃダメだよぉ?」

「そんなことしないよ!」


 まずは鍋でお湯を沸かす。

 湯気が出てきたら薬草を入れて煮出す。

 後は待つだけ!簡単簡単!

 待っている間に傷薬も作っちゃおう。


 と思っていたが、そう簡単な話ではなかった。

 徐々に煮詰まっていく鍋の中身。

 湯気の色が少し変わりながら物凄い薬草臭がし始め、台所中に立ち込める。

 たまらなくなって鍋を火から外す。


「げほっ、ごほっ、目に()みるっ!」

「リア!なんか変な臭いがしたけど大丈夫?!」

「ごほっ!なんだこの臭いは!!」


 異常な臭いと煙に、みんな集まって来てしまった。


「ごめんなさい!ちょっとポーションを作ってて・・」

「とりあえず、換気するよっ!」

「後で説教するから覚悟しておけ!」


 手分けして、屋敷中の窓を片っ端から開けていく。

 ようやく最後の窓を開け終わり、私たちは居間に呼ばれた。


「まったく、室内でポーションを作ろうだなんて、何を考えているんだ!!」

「本当にごめんなさいっ!!」

「まだ薬草の臭いがするね~」

「で、なんでこうなったのか説明してもらおうか」

「その、薬草がいっぱいあったからポーション作って売ったらお金になるかなーって思って」

「きちんと機材が揃っている施設ならまだしも、料理するみたいに鍋で作ろうなんてどうかしてるぞ」

「そ、そうなんですか?」

「当たり前だ。もしかして、アルケミストの資格を持っていないのか?」

「いいえ、持っていませんが何か?」

「はぁ、呆れて物も言えん。本当にアイツは適当だな。薬屋を継がせるつもりなら、少しは勉強させておけよ」

「えーと、何か問題でも・・?」

「問題?大アリだ!ポーションは規格が決まっているから、アルケミストの資格を持っている者以外は勝手に作ってはいけない決まりだ!」

「ごめんなさい、私がポーションなんて言ったから・・・」

「いや、君はそちらの専門ではないだろう?ポーションなんて加工品の代名詞みたいなものだから、話題に上がるのは当然だろう。ともかく作ったポーションは廃棄しておくように。分かったな!」

「はい、分かりました・・・」


 領主様は怒ったまま部屋から出て行ってしまった。

 部屋には残された私とミラ。


「ミラ、ごめんね。また迷惑かけちゃった」

「ううん、私も考え無しに提案しちゃってごめんね」

「でも、前も宿屋の時に迷惑かけちゃってるし!!」

「それは違うよ、リア」

「・・え?」

「私、パパとママから料理を教えてもらって、何の疑問も持たずに、ず~っと同じように作ってきたんだ」

「うん、ミラのご飯ってミラのお家の味だもの」

「そんな時にリアのあの提案だよ?私だったら、味が変わって誰も来なくなったらって思ったら怖くて出来ないよ」

「それなのに、私の勝手でミラのお家には冒険させちゃった」

「ううん、冒険()()()()()()()んだよ?」

「!」

「新しい料理の研究してて楽しかったんだよ?だから迷惑なんて思ってない。むしろ、感謝しているんだよ」


 ああ、私また勘違いしていたんだ。

 迷惑ばっかり掛けていたと思っていたのに、楽しいと思っていてくれたんだ。

 それなのに、全部自分が悪いって勝手に思い込んで、全部自分でやらなきゃって思って。

 本当に私は馬鹿だ。

 涙が頬を伝って床に落ちる。


「み、ミラ~~」


 そのままミラへと抱き着く。

 ミラも私のことを優しく抱き返してくれる。


「だからね、勉強も冒険も一緒に頑張ろう?二人でやれば、もっともっと楽しいと思うんだ~」

「うん、一緒にやろう!もっともっと頑張って、いつか一緒にいて良かったって言わせる!」

「ふふ、今も一緒にいて良かったって思ってるよ~?」

「うん、私も!」



 もう一人で悩むのは辞めよう。

 頼れる友達がいるのだから、困ったときには相談しよう。

 そして、友達が困っている時に力になれるよう、私も頑張らなきゃ!!

 そのために、今やるべきことをやらないと!


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