15.領主様の課題 その4
「ということで外出してきます」
「なるほど、吹矢か」
庭の手入れをする領主様に、外出する理由を伝えに来たところだった。
「だがそれなら40、いや30点だな」
「え・・・どうしてですか?!」
「考えてみろ。相手が厚めの服や鎧を付けていたらどうする?魔獣の皮や毛だってそれなりの強度がある。それに、かわされた後のことも考えていない」
「そ、そうかもしれないですけど!」
もちろんそれも考えてはいた。
しかし、思っていた以上に辛辣な評価だった。
「一応外出の許可は出すが、別の方法も考えておくことだ」
「・・・はい」
「じゃあ行ってきま~す」
「ああ、気を付けてな」
屋敷付近の草原で、材料になりそうなものを拾っていく。
途中小型の魔獣が襲ってきたが、ミラがあっという間に退治してしまった。
そのまま腰につけていたナイフを取り出し血抜きをしている。
きっと夕飯に使うつもりなんだろう。
手際はいいのだが、長時間見ていて気持ちの良いものではない。
あまり注視しないようにしよう。
日が傾き始めた頃には、十分な材料が溜まっていたので屋敷に戻ることにした。
「じゃあ、私は作業してくる」
「ご飯できたら呼びに行くね~」
早速部屋に戻って、試作品を作り始める。
領主様に借りた道具を使い木を削って形を整えていく。
発射するための筒と矢が10本ほど。
それに鳥の羽を付けて紐でぐるぐる巻きにしたら完成!
試作品なので毒はまだ塗らない。
「できたー!」
「リア~、ご飯だよ~」
「うん、いま行くー」
夕飯は朝と同じく3人。
お皿の一つにはコロコロに切ったステーキのようなものが乗っていて、ほんのりといい香りがする。
今朝のとはまた別の香りだ。
きっと使っている薬草の種類が違うのだろう。
口に入れて噛みしめると、肉汁がジューシーに口いっぱいに広がる。
肉の臭みが薬草の香りに包まれていい感じに溶け合い、鼻からいい香りが抜けていく。
うーーーーん、し・あ・わ・せ!
あれ・・・もしかして、私より薬草の扱いが上手なのでは?
自分の立ち位置が揺らいでいない?
食事も終わり、各々の部屋に戻ってそれぞれの時間を過ごす。
私も明日の準備をしている最中だ。
準備を始めようと道具を並べていると、ドアをノックする音がする。
「リア~、まだ起きている~?」
「うん、起きてるよー?」
「入ってい~い?」
「大丈夫、入ってきていーよー」
「お邪魔しま~す」
「何かあった?」
「うん、ちょっとお願いにきたの~」
「お願い?」
「リアの持っているあの分厚い薬草図鑑を借りれないかなーって思って」
「いいよー、今日はもう使わないし」
バッグの中から図鑑を取り出しミラに渡す。
「ありがと~、明日の朝に返しに来るね~」
「うん、わかったー」
「じゃあ、おやすみ~」
「おやすみー」
ドアが閉まったのを確認して、作業に戻る。
でも、ミラが薬草図鑑なんて、何に使うんだろうか?
気になるところではあるんだけど、私も今するべきことをしないとね。
忘れる前に、近くで見つけた薬草も、図鑑に書き留めておこう。
ページはまだ始まったばかり、もっともっといっぱいの薬草を探さなくちゃ。
さあ、もうひと仕事だ!