表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬草少女は今日も世界を廻す  作者: るなどる
第1節
12/159

7.高級薬草

「ただいまー」


 家に着いた時には、辺りはすっかり暗くなっていた。


「お帰りなさい。もうすぐご飯よ」

「うん、片付けたらすぐいくー」


 取ってきた薬草は、明日の朝にお店に出しやすい場所に置いてきた。

 問題はこの子だ。

 流れのまま連れてきてしまったが、どう説明しよう。

 怪我が治るまで面倒見るにしても、内緒でというには無理がありそうだ。

 やっぱり素直に話すべきかなぁ。

 そんなことを考えながら居間に到着する。


「遅かったみたいだけど、久しぶりで道でも迷った?」

「ううん。その、ね」


 そう言いかけた時、ふと振り向いたお母さんと兎の目が合う。


「あの場所に、この子が怪我をしていたから、そのまま連れてきちゃった・・・」


 お母さんは一瞬、厳しい顔になったが、またすぐにいつもの優しい顔になった。


「そう、今回は助けられたのね」

「・・・うん」


 お母さんも『あの時』のことを気にしているんだろうな、きっと。


「でね、怪我が治るまでこの子を面倒みたいんだけど・・・いい?」

「とりあえず、ちゃんと傷の手当してからにしましょうか」


 そう、まだ応急手当をしただけでちゃんとした治療はしていない。

 まずはハンカチを外して傷口をきれいにしないと。

 ハンカチの下には、大きな切り傷がある。


「あれ、傷口が塞がっている?」

「このくらいなら大丈夫そうね。念のため、消毒して薬を塗っておきましょうか」


 私がしたのは、薬草を使った応急処置だけのはずだった。

 ただの薬草にここまでの力は無いはずだ。


「ねぇ、お母さん。あそこに生えている薬草って特別なものなの?」

「いいえ、ごく普通のありふれた薬草だけどどうして?」

「あんなに深い傷で、すぐにでも死にそうだったの、こんなに回復が早いってある?」


 少し考えた後、何か思い当たることがあったのか、質問が返ってきた。


「この子に使った薬草ってどんなのだった?」


 あの時に使った薬草のことを話すと、顔に手を当ててため息をつかれてしまった。


「・・単刀直入に言うわ。それが『高級薬草』よ」


 その後、『高級薬草』についての話を聞かされた。


 薬草の新芽の部分は、他の薬草に比べて格段に効果が高く、ポーションなどの材料として取引され、そのものが流通することは稀であるということ。

 なぜ『高級』なんて名前が付けられているかというと、()と違い()である薬草は、新芽を摘み取ってしまうと枯れてしまう。しかも取れる量は少量。店で扱うくらいの量を確保しようとするならば、まさに()()()の事業である。

 効果のほどは、目の前にしている事実が全てを物語っている。


「これなら明日にでも森に返して問題なさそうね」


 森から来たものは森へと返す。それがこの村の決まりである。


「ところでこの子、兎・・・ではなさそうだけど、なんでしょうね?」

「え?」


 あの時は、記憶と混濁して『兎』であると認識していたが、よく見ると特徴的な長い耳がない。

 瞳の色も赤ではなく、青だ。

 付近ではあまり見かけない種類の生き物のようだ。


「お父さんなら分かるかなぁ?」

「そうね、先にご飯を食べてから聞いてみましょうか。お父さん呼んできてくれる?」


 その後、みんなで食卓を囲みながら森での出来事を話した。

 以前と同じように、村での警備を少し厳重にしようという話になった。

 あの謎の生き物については、突然変異種か何かだろうといった予測の範囲を出ず、結局は分からずじまいだった。

 危険性は低いということで、明日の朝、森に帰しに行くことになった。


「おやすみ」


 いつもとは違う、一晩だけの同居人。

 その晩、不思議な夢を見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ