104.真実へと続く道 その6
「状況は分かったわ。でも、もう一つだけ質問させて」
「何だね?」
「私が知りたいのは、お父さんが殺された理由と遺体の場所よ」
私が山から戻った後に派遣された調査隊が見つけたものは、メモだけだった。
遺体はもちろん、凶器も不明なままだ。
「・・・申し訳ないが、理由については分かりかねる」
「そう・・・」
「だが遺体なら、腐敗を防ぐためにギルドの地下に隠してある」
「地下?もしかして、リアが閉じ込められてた場所かしら?」
「閉じ込められていた?あそこは、並の人間じゃ寒くて凍死してしまうような場所だぞ?!」
確かにあれはちょっと・・いや、かなりヤバかった。
クリミナさんが気付かなかったら、あのまま氷漬けになってたかも。
ううっ・・思い出したら、急に寒気がしてきた!
「じゃあ、あの牢屋の中にあったのって・・」
「牢屋の中?いや、遺体は階段の下の隠し扉の中だが?」
「え?」
じゃあ、私の隣にあったあの白い骸骨みたいなのって・・・?
い・・ぎゃぁ~~~~~~~っ!!
「なあ、リア姉ちゃんが口をパクパク開けてるけど、大丈夫なのか?」
「ん~、放っておけばそのうち元に戻るんじゃないかな~?」
「そうなのか?」
「あそこから運ぶとなると、人手がいるわね。話が終わったら手伝って貰えるかしら?」
「ああ、いいぞ。ギーダもいいな?」
「・・・面倒だが仕方ない」
「さて、他に聞きたいことはあるか?」
「リア姉ちゃんも聞きたいことあったようだけど、こんな状態だから次は俺でいいかな?」
「いいんじゃないか?」
「なら、俺が聞きたいのは、教会と孤児院のことだ。取り壊すって言ってたけど、どういう意味だっ!」
「それは誰から聞いた話だ?」
「誰からだって?みんな言ってることだ!」
「・・・質問を変えよう。君の言っているみんなとは、誰のことかね?」
「質問を変える?さっきと同じじゃないか!」
「それは違うぞ、少年。少なくとも、君の言っている『みんな』の中にはワシは入っておらん。違うかね?」
「そ、そんなの屁理屈だっ!」
「そうか。なら君の言っていることは、他人から聞いたことを真に受けて妄想した、ただの屁理屈ということになるな。そうだろう?」
「くっ・・」
「リト。真面目に話をしているなら、聞かれたことにはきちんと答えるべきだ。それともお前は、自分の意見を押し通すことしか出来ない半端者なのか?」
「お、俺は半端者じゃない!」
「なら、するべきことは分かってるだろう?大丈夫だ、どうしようもなくなったら俺たちがいる。俺たちは血が繋がっていなくても、家族だからな」
「ブロウお兄ちゃん・・・」
「ほら、しっかりな」
「うん!」
「話は纏まったかな?」
「ああ。俺が言った”みんな”は、テレジアお姉ちゃんにブロウお兄ちゃんたち、それに神父様だ」
「・・・そうか。だが、君の世界はまだまだ狭いな」
「何だとっ?!」
「子供の世界とは狭いものだ。君が大きくなれば世界は広くなる。果てしなく、な」
「それはどういう・・」
「今は狭くとも、それが君の世界の中心になる。そしてそれを忘れずに変わらなければ、きっと強く大きくなれるだろう」
「それ、どういう意味だ??」
「まあ、今を大切にして色々な事を学べ、ということだ」
「それって、テレジアお姉ちゃんの勉強会とか、ブロウお兄ちゃんの剣の稽古のことか?」
「それでいい、今はな。・・・それと、教会と孤児院を取り壊すという話は聞いている」
「やっぱり壊すんじゃないか!」
「『ワシが』とは言っておらん。この話はトリスタン神父から聞かされたものだ」
「『神父様が』って、どういうことだよ?!」
「それは本人から聞く方が良いだろう。神父様は君の世界の人間だろう?」
「も、もちろんだっ!後でちゃんと聞きにいくさ!」
・・・はっ?!
あれ、もう話が終わってる??
よく分からないけど、リト君が納得したような顔をしているみたいだし、良かった良かった!
―――で、いいんだよね?
結局、私の質問は最後になっちゃったけど、二人の質問でほぼほぼ聞くことは無くなってしまった。
・・・正直、私がこれからする質問の答えが返ってくる可能性は、ほぼゼロだ。
それでも希望が僅かにあるなら、それを信じてみたいと思う。
私がする質問は―――




