97.山からの便り
「今日は大事な話があって来たの」
「もしかして、証拠が見つか・・」
「おい、ちょっと待てよ!」
私とクリミナさんの間に、怒りに声を震わせたリト君が割って入ってきた。
二人の間には、殺気にも似た嫌な空気が流れている。
「何?私は今、リアと話をしてるんだけど?」
「大事な話だって?!お前たち商人ギルドが、この町をメチャクチャにしたんじゃないか!それを今更何だってんだよ!!」
「・・・そうね。でも、今の商人ギルドを何とかしたいのは、あなただけじゃないわ」
「そんな都合のいい話、信じられるわけないじゃないか!」
「信じる信じないは自由よ。でも今は、あなたのような子供が出る幕じゃないわ」
「なんだとーっ?!」
「ちょ、ちょっと二人とも止めてー!」
喧嘩腰になっている二人の間に、無理やり割って入る。
チラリとミラの方を見て『他の子供たちを別の場所へ』と視線で合図を送る。
ミラはコクンと軽く頷き、子供たちを寝室の方へ連れて行く。
もし殴り合いの乱闘になったら、小さい子には見せられないもんね。
さて、こっちもなんとかしないと。
「リト君がすごく怒っているのは分かるよ」
「分かる、だって?他所から来たお姉ちゃんたちに、この町の何が分かるって言うんだよ!」
「・・そうだね。私はみんなに会うまで、この町のこと全然分かってなかった」
「だったら!」
「でも、この町の色んな場所を見ていくうちに思ったんだ。ここには楽しいこともあるけど、怖いこともあるんだって。今でもまだ怖いと思ってるところはあるよ」
「じゃあ、ほっといてくれよ!」
「ごめんね、それは出来ないよ。だって、このままこの町から逃げたら、絶対後悔すると思うから」
「リア姉ちゃん・・・」
よし、とりあえずこれでリト君は落ち着いてくれそうだ。
場の空気も戻ったし、あとはクリミナさんからの話を聞けば・・・。
「で、本音は~?」
「安心で安全な美味しいお菓子を、お腹いっぱい食べたい!・・・って、何言わせるのよ~~っ!」
サラリと自然に入ってきたミラの質問に、思わず率直な答えを述べてしまった。
慌てて言い直そうとするも、明らかに場の空気がおかしい。
「何だ、ただの食い意地の張った腹ペコ姉ちゃんかよ!」
「あー、うん。お菓子は美味しいよねー?」
「・・・阿呆」
「リア、それは言わなかった方が良かったと思うぞ?」
「えーっと、私は何を見せられてるのかしらー?」
みんなの容赦のない言葉が、グサグサと胸に突き刺さる。
痛い、心が痛い!!
「ちょっとぉ~~~、ミラ~~~~!!」
「ごめん、ごめ~ん。でも、その方がリアらしくていいかなーって思うよ~」
「はぁ・・なんか、怒っていたのがどうでもよくなってきた」
「ほらね~?」
「『ほらね~?』じゃ、なーーーい!」
「それは置いといて~、どこまで話をしたのかな~?」
「置いとかないでーー?!」
「そう、放置されるのが一番辛いの・・・って、危うく何をしに来たか忘れるところだったわ!」
ああー、そう言えばクリミナさんは用事があって来たんだった。
クリミナさんの調子も元に戻ったみたいだし、このまま話を聞こう。
・・・もちろん、後でミラに一言入れるのも忘れずにね。
「で、大事な用事ってことは何かあったんですか?」
「ええ。今朝、調査隊が返ってきたわ。場所はリアから聞いた通り”第7休憩所”だったわ」
「私が入れなかった場所ですね」
「四年前に調査に行ったときは、硬くて大きな岩があったから中まで調べられなかったんだけど、一部が劣化して崩れたみたいで、そこを足掛かりに中に入ることが出来たらしいわ」
アレ?あそこにそんな場所あったかなぁ・・・。
あ・・もしかして、私があの鱗を取る時に砕いた岩のことかな?
でも説明するほどのことでも無いし、まあいいか。
「入り口を片付けたら、岩の一部に焦げた跡が見つかったわ。多分、爆弾を使ったんでしょうね」
「それ、奥の方は大丈夫だったんですか?」
「ええ、奇跡的に綺麗に残ってたらしいわ」
「それで、中には何かあったんですか?」
「それがね、あったのはこの手帳だけなのよ」
「手帳?」
「そう、調査隊から今朝受け取ったばかりのものよ。中身はまだ見ていないわ」
「俺達も確認させてもらっていいか?」
「・・・私のことを信じられない人には見せられないわ」
そう言って、クリミナさんはリト君の方に視線を送る。
その視線に引かれるように、みんなの注目もリト君の方に集中する。
リト君は無言の圧力に少し苛立ちを覚えたようだけど、覚悟を決めたように重い口を開いた。
「・・・分かったよ、信じるよ!」
「なら決まりね。じゃあ、開いてみるわよ?」
クリミナさんが黒皮の表紙の手帳に手をかける。
さて、何が書いているのやら・・・。




