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衝動

作者: 趙海如

 母さん

 いつもいつも「早く孫の顔が見たい」と口煩くするのを止めてくれないか?

 人より遅い俺でも、最近、遂に好きな人が出来た。

 四六時中彼女の事を考えている訳ではないが、彼女以外の女の事を考えた事がない。

 だけど、知っての通り、俺は彼女に振られた。

 俺は彼女が好きだが、彼女は俺にその気がないらしい。

 どうやって彼女に好かれるようになれるだろうと、情けなく母さんに相談したな。本当、男として情けない。

 そんな俺に、母さんは言ってたな。諦めずに、「粘るように彼女にアピールしろ」と。

 それが母さんが、自分より格上の父さんと一緒になれた方法だと、俺に教えてくれた。

 しかし、母さん。俺はやはり父親似らしい。

 俺にとって、父さんの事を思い、そこまで頑張れる母さんの方が格上だと思ってる。

 俺は「彼女の迷惑になるから」と思うと、とても粘るようにアピールできない。母さんのやり方ができない。

 父さんにも聞いた事がある。自分に「粘った」母さんをどう思う?と。

 そして、俺の思った通り。

 父さんが母さんを好きになったのは、自分にアピール続けてきた母さんを、「粘るように」した母さんを、いつしか愛おしく思ったのだからだと。

 なので、きっと母さんの助言は正しいと思う。

 ただ、俺はそれができない。母さんのようにできない。

 きっと、俺はこれからも彼女に話しかける事はなく、隠れて彼女を見つめるだけなのだろう。

 彼女にそれを気づかれたら、きっと彼女も俺に申し訳ない気持ちになったり、または「迷惑だ」と思ったりするのだろうから、彼女を見つめている事も気づかれないようにするよ、俺。

 もしかしたら、ある日、彼女が俺の事を急に思ってくれるかもしれない。僅かな可能性だけど、俺は待ちたいと思う。

 理性的に考え、感情的に動く。

 暫く孫の顔を見せて上げられなくて、ごめん。俺は俺のやり方をするよ。


 =======================================================================


 妻へ

 俺がこれを書いている時、お前は今どこで、何をしているのだろう?

 本音を言うと、俺はお前より、他に好きな女の子がいた。

 だけど、その人は俺に興味がなく、俺は半ば諦めていた。

 そんな俺に、彼女の事を完全に諦めさせたのは、お前だった。

 俺のことが好きと、しつこく俺に言うお前が、いつしか愛おしく思えたんだ。

 だから、俺はお前と一緒にいる事を選んだ。お前の事を愛するようになった。

 だけど、俺達は無理だったようだ。

 寂しいからと、お前は言った。それを理解しよう。

 俺も同じく、お前に会えなくて、ずっと寂しかったんだからな。

 だけど、俺はそれでも許さない。

 俺はお前と違って「寂しいから」と、お前以外の人でその寂しさを埋めようとは思えない。

「愛」は「恋」と違うものだと俺は思うんだ。

 恋は人を好きになる気持ちだが、愛は人を好きでい続ける気持ちだと思う。

 責任だと思う。

 だから、俺はお前を愛すると決めたその時から、お前以外の人を愛さないとも決めていた。

 お前を幸せにする責任があると思っていた。

 お前の方は違うのようだ。

 お前は俺に「恋」をしたが、「愛」をしていなかったようだ。

 理性的に考え、感情的に動く。

 あの子達はお前の子供でもあるが、俺の子供でもある。

 なので、あの子達がお前のような人間にならないように、俺はお前と戦うよ。

 さようなら、俺が愛した人。


 =======================================================================


 娘よ

 初めて君に「お父さん臭い」と言われた時の事、君は覚えているか?

 俺はあの日、久しぶりに食事が喉を通らなかった。

 こう見えて、俺はかなり匂いに敏感な方なんた。

 家に帰ると、必ず先にお風呂に入って、それから君に話しかけるんだ。

 香水もその時から着け始めた。まだ子供だった頃の君に教えられた、君が大好きなあの花、それと同じ匂いの香水だ。

 だけど、逆効果だった。君は更に「臭い」と言うようになった。

 君にとって、俺は「臭いモノ」らしい。

 君が初めて「彼氏が出来た」と言われた時、俺は少し寂しい思いをしたが、「そういう年頃になったなぁ」と、少し嬉しくも思った。

 それと同時に、「なぜ彼なんだろう?」とも思った。どう見ても、彼は君に相応しくないと思った。

 それでも、君は彼が好きのなら、俺は応援しようと思う。ずっと君の味方でいて、君の幸せを願っていた。

 だからかな?

 君が彼ではなく、他の男と結婚した時も、驚きながらも嬉しかった。

 君は一時の熱ではなく、自分の考えて、愛する人を選んだのだから。

 君から一言も教えられていなくても、君がそれで幸せなら、俺はそれで良いと思っている。

 だけど、君達はずっと一緒には居られなかった。

 君の浮気だとその男が言うが、それでも離婚はやり過ぎだと思った。

 なぜ彼は君に、もう一度チャンスを上げられなかった?

 なぜ彼はその後、君からあの子達も取り上げようとするのだろうか?

 君から話を聞いて、君が泣きながら「自分が悪い」と言われても、俺はあの男の方が許せなかった。

 そんな俺に、君は「母さんと離婚した癖に」と怒られた。確かに、君にとって、俺はあの男と同じのようだ。

 あの時、俺はそれが正しいと思ってそうしたが、結果として、君は実の母親と離れ離れになった。

 後悔していた。君に申し訳ないと思った。

 俺はそれ程に...あの男よりも、正しさよりも、君の方が大事なんたと分かって欲しい。

 俺は恥ずかしがり屋で、あの男のように「好きだ」と、「愛しているんだ」と君に言えない。臭いと言われたから、君の傍に居られない。

 だけど、俺は誰よりも君が大事だと、それでも分かって欲しい。

 寂しいのなら、俺も君の話し相手になれると思うんだ。

 そうすれば、君は初恋のあの男とまた会おうと思わなったかもしれない。君達は「離婚」という最悪な結果にならなかったのかもしれない。

 今更それを言うのも仕方がない事だな。

 全ては君に「頼りになる」と思われなかった俺が悪い。

 俺がもう少し、君にとって良い父親になれれば、君は幸せで居られたのだろう。

 理性的に考え、感情的に動く。

 君に好かれていないけれど、俺は誰よりも、君の事を愛している。

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