5.???視点、という名の説明回
「それでは、あとはお任せします。色々と便宜を図って頂き、ありがとうございました」
『うむ。礼など不要じゃ此方の方こそほんにすまなかったな。
……さて、この後のことじゃが、お主は一時的に眠りに入る事となる。そして準備が整い次第、彼の世に行くことになるが、それが明日なのか十年後なのかはワシには分からぬ。
……ワシが言うのも何じゃが、息災に暮らせよ』
「はい。ありがとうございます……ではーー」
『ちょぉぉぉぉぉぉっと待ったぁぁぁぁ☆』
『「!!」』
『ワタクシのことぉ忘れて無いですかぁ……プンプン☆』
「あ……イエ、忘レテナンカイマセンヨ?」
『そぉ?じゃあ、はいコレ☆』
「何ですか?盃?あ、なんか滲み出て来たーーくんくんーーお酒?ってか、私魂なんですよね?何で身体無いのにモノ持てるんですか!?それ以前に飲めるんですか??」
『そぉだよぉお・さ・け☆乾杯するのにはやっぱお酒だよね☆
でぇ、このお酒はぁのめるよぉ何故飲めるのかは企業秘密だよ☆
そんなことよりぃ取り敢えずぅ乾杯しよぉ
ではではぁ、これからのぉキミの前途を祝してぇカンパぁイ☆ーー』
***
『……あれで良かったのかの?』
『……はい、最後に一目会えましたし、一緒にお酒を飲む夢も叶いました。
後はあの子の幸せを祈るばかりです。本当にありがとうございました。』
ーーそうです、ワタクシは皆さまのご想像通り、優希の死んだ母の篠田夏希でございます。
優希の、これからの冒険譚の前に少しワタクシのお話にお付き合い下さいませ。
嫌だと言ってもぉ付き合ってぇ貰っちゃうよ☆
ワタクシは元々地球人では無く、アークディアの天人族でございます。
天人族は他の人族に比べ、魔法に特化した種族で御座いまして、ワタクシはその中でも特に能力が高く、聖女になるべく幼少の頃から神殿にて教育されて参りました。
その為周りの方々は女性か年配男性が殆どでしたよ。
そんなワタクシが彼奴に出会ったのは天人族の国で成人の儀を兼ねて行われた舞踏会でした。
あ、天空に国があると言っても転移ゲートなどの移動手段は勿論有ります。
天人族と言っても背中に出し入れ自由の純白の翼があるのと、魔力が高い分寿命が長いくらいでそれ以外の生活は他の人族の方と然程変わりはありません。
元々舞踏会には各国の代表が来賓として招かれておりましたが、聖女候補のワタクシが成人になると言う事でいつも以上に来賓の申し込みが多く、ワタクシと年齢的に釣り合う各国の王侯貴族の子弟が多数いらっしゃいました。
まるでお見合いパーティーですね。
因みにこの世界は異種族間の婚姻もあり得ます。
子供はハーフではなく父母どちらかの種族になりますが、見た目や能力的なものはその限りではありません。
彼奴は魔人族の第三王子で称号に勇者の名を持つ、銀髪に紫瞳のとても凜々しい殿方でした。
線は細いのに引き締まって良い感じに鍛えられた肉体、涼しげな目元、キリリと引き結ばれた薄めの唇。
えぇワタクシ好みのイケメンでした。
ーーひと目会ったその日から、恋の花咲くこともあるーー
その目が、唇が、ワタクシを捉えるとふわりと綻んで……それで無くとも同じ年頃の異性に殆ど面識も無いワタクシ。
それはもう「Yes,Fall In Love☆」でした。
アークディアでは魔人族は別に悪しき者では無く、普通に種族が違うだけの良き隣人です。
ただ其方は地下に国があり翼が漆黒、丁度天人族の対極にある種族という感じですね。
とにかくその時お互いに一目惚れを致しまして(キャッ♡)、なんだかんだ……まぁ紆余曲折色々ありましたが、結局結ばれることと相成りました。
暫くは幸せな結婚生活を送って参りましたが……
ワタクシ失念しておりました、魔神族は一夫多妻制だと言う事を。
天人族は一夫一妻制で、結婚したら生涯その伴侶と連れ添います。
我が両親も例外ではなく仲睦まじく、ワタクシはそれが当たり前だと思っておりました。
それ故結婚後新たに夫人の皆様が増えていった事は少なからずショックでございました。
しかし政略的に断わるのが難しい縁談、種族の結婚に対する認識の違い、またお互いの立場や国、家族などの様々な柵、種々雑多重々承知致しておりましたのでワタクシなりに嫌悪の情を押し殺して他の方々と上手くやっていこうと思っておりました。
ですが、でーすーが!
ワタクシが初の我が子を身ごもって、大事を取って里帰りしている間に、まさかのワタクシ付きの女官に手を出し、その者を第四夫人に据えると伝え聞いた時、ワタクシの中で何かが切れてしまいました。それはもうブッツリと。
そもそも順番逆ですよね!先に手が出てる時点でアウトですよね!?
それからは我ながら早かったです。
直ぐにお義母様と大神官様を味方に付けーー儚げに泣きはらし、心的ストレスによる体調不良、お腹の子の胎教によろしくない等々……
お義母様の計らいで彼奴が公務で不在なのを良いことに、手続き等々全て済ませーー手続きは誓約書の破棄だけなので(お義母様と大神官様が味方に付いているので)簡単に終了。
そしてサヨナラーー
取り敢えず、ほとぼりが冷めるまで何処に行こうか考えていたところ、大神官様が此方の世界を紹介して下さいました。
なんでも双方の神様方はお知り合いだそうで、かなり交流がおありになるとのこと。
ですので互いの世界では双方の世界に類似したモノが多く見られます。
ファンタジーもので想像上の生き物と思っているモノは其方の世界では実際に存在しているものだったりします。
まぁそれで此方の神様が丁度助手を探しているという事でしたので一も二もなく飛び付きました。
……まぁワタクシも若かったですね、うん。
有無を言わせずサヨナラとは彼奴には悪いことをしました。
でも反省はしてますが後悔はしておりません。
それからワタクシも優希と共に親子二人でがんばって来て、(仕事も助手から出世しましたよー元々聖女だったので神格がかなりの速さで上がりました、最短記録らしいです。えっへん)平和に暮らしていたのですが、約二十年前ワタクシが引き継いだ担当地域が由々しき事態に見舞われましてーー
と言いますか、どうにもならなくなったからワタクシに回ってきたと言うことでしょうか。
貧乏クジですか、それとも新人いじめですかー
兎にも角にも、暫く其方に行かなければならなくなりました。
緊急事態、エマージェンシーというやつです。
また、ワタクシ自身も二十年間見た目が変わらない為、周りが徐々に不審に思っていたようです。
今なら「美魔女です」って誤魔化せたのにー
上司(神様)に諮問を受けた結果、可及的速やかに担当地域に行かなければならぬ事、また優希が成人の年齢となっているという事を鑑みて、優希には可哀そうなことをしましたが……日本人としての篠田夏希は病死となり、この世を去る事と相成りました。
余りに急だった為、二十歳の優希とお酒を飲むことすら出来ませんでした……
優希、ごめんね?何も言わず去ってしまって。
お母さん、優希がまだ小さい頃、本当の事を話そうとしたのだけれど……
真顔で「おかあさん、ちゅうにびょうというのはね……」と一時間ほど懇々と諭されてから、話すのを諦めました。(遠い目)
お母さんは天人族のままだったけれど、優希は神の御業(秘術)で身体を日本人に入れ替えていたので、このまま此方の世界で結婚して子供を産むと言う未来もありました。
本当は一生を添い遂げる人と出会ってほしかったけれど、お母さん達のせいで少々男性嫌いになってしまった様で、ゴメンね。
まぁ結局は此方の(他の神様です)調整ミスで、優希の身体が自身の魔力に耐えられなくなり、破裂寸前ーーもう少し遅かったら木っ端微塵になり魂を取り出せなくなるところでしたよ!!
ワタクシの可愛い優希がそんなことになっていたら…………ワタクシの全身全霊を掛けて死すら生温い、存在自体を後悔するようなーーーはっ、げふんげふん。
えーっと、とにかく間一髪間に合いました、本当に本当に良かった。
幸いアークディアでの身体を大切に封印保存しておりましたので、其方に戻すことに致しました。
翼は日本人の身体に入れ替えるときに媒介として使用しておりましたが(産まれた直ぐの翼は魔力の塊なんですよ)今回の事で失われてしまいましたーー許すまじ……
大神様は優希に「生まれ変わるのは普人族」と仰ってましたが厳密には「翼が無くなったのでステータスを普人族に書き換えた」です。
元々天人族なので(あ、そうそうワタクシの種族を受け継いでますよ)基本スペックが高い上、聖女と勇者の子、更に今回ミスした神様の神力の一部を大幅に慰謝料として分捕っ……げふんげふん、頂戴してスキルに回しておりますので、かなりハイスペックとなっている事でしょう。
因みに神力を頂戴した神様は神力縮小に伴い、少し格の低い地へ異動しましたが(左遷とも言う)数百年も経てばまた戻ることでしょう。どうでも良いですが。
……少し話が長くなってしまいましたね。
優希には色々と辛い思いをさせてしまって悪い母親だったけれど、貴女のことを本当に愛していますよ。
優希がアークディアに行っても此方からずーっと見守っていますーー実際見ることが出来るしね、えへ。
願わくば貴女のこれからの人生に幸多からんことを祈りますーー
あ、加護も付いちゃった。