3.乙女ゲーム路線を勧められましたがお断りします
『さて、ここからはワシではなくーー』
『はーいワタクシから説明させて貰うよぉ☆』
今まで一言も話さなかったもう片方の神様が急に喋り出したと思ったら・・・なんか思ってたのと全然違うんですけど?!
まるで合成音声みたいな声なのにテンション高いよ、ちょっと怖っ
『とりあえずぅあっちの世界に行く前にぃ……
ダカダカダカダカ……パンパカパーン☆
なんと、とぉってもステキでぇ便利でぇ超イケてるスキルをプレゼントしちゃいまぁす☆』
……口でドラムロールですか、そうですか……なんだろう、神様なんだけど……
『タダより怖いものは無いって思ってるぅ?向こうでぇ何かさせられると思っちゃうぅぅ?
大・丈・夫ぅ怖くないよぉ?これはねぇいわゆる慰謝料みたいなのもだからぁ気にしなくて良いんだよぉ☆』
……なんだろう、とてつもなくウザ……げふんげふん……いやいや相手は神様。
『んーとぉイロイロ種類があるんだけどぉ、キミはどんな路線を目指すぅ?』
「路線、ですか?」
どんな路線て何ぞや?芸能人が「アイドル路線で行く」とかそんな感じで使うアレか?
能力に路線が関係あるのか?
『キミの世界にはぁゲームとかぁ小説や漫画とかぁ色んな媒体でファンタジーを表現してるじゃない?
アレって全てが想像上のものって訳じゃないんだぁ・・・フフフこれ以上は企業秘密だよぉ☆
RPGとかぁ狩りアクションとかぁ、後は内政ものなんかもあるよねぇ
色々ある中でぇ目指す路線に適したスキルをぉプレゼントしちゃう訳でーす☆
あげられる数に限りがあるのにぃ死にスキルだと勿体ないでしょぉ、もったいないお化けが出ちゃうよね☆』
「そ、そうですか・・・あ、ありがとうございます。」
言ってる内容は私にとって凄くありがたいんだけど・・・
何なのこの、精神力がガリガリと削られていく感じ。
こ、これは……かなりイラッとーーはっ、相手は神様、相手は神様……
『ワタクシ的には乙女ゲーム路線がお・ス・ス・メなんだけどぉ……
フフ、逆ハーとか狙っちゃえばいいんじゃないかなぁ☆ 王子様とかぁ騎士団長とかぁ筆頭魔術師とかぁ イケメンパラダイスねっ☆
世界が変われば倫理観も変わるかもしれないしぃ……フフ、脱お一人様も良いかもね☆』
い、イケメンパラダイスって……
「……ハァ、ソウデスカ……
イエ、セッカクデスガ乙女ゲーム路線ハ辞退サセテ頂キマス……」
『そぉお?逆ハーでぇイケメン達とキャッキャウフフも良いと思ったんだけどぉ☆』
よ け い な お 世 話 で す !
何言ってんのこの人(人ではないが)
元父親の所業に嫌悪感ありまくりなのに、自ら逆ハーとか……
やるわけ無いじゃん!バカなの?バカなんですか?!
ぐぬぅ、相手は神、相手は神、相手は神……
おっとあまりの言いぐさに思わず敬称つけるのも忘れたよ。
多くの乙女ゲームのヒロインて、大抵が婚約者の居る男性に言い寄った挙げ句、文句言ってきた相手を悪役令嬢にしてギャフンするじゃない、あれ、納得いかないわぁ
婚約までしてると言う事は、家の柵やらその為の教育やら、もしかしたら好きでもない相手に嫁ぐその覚悟やら、色々なものを飲み込んでその位置に居る訳じゃない(身分の高いお嬢様も大変ねー)
普通に考えたら、婚約者に近づく女に苦言を呈するのなんて当たり前の事でしょ?
それをか弱そうに、「私健気に耐えてますぅ」みたいな顔して。
ふらふら獲物が近づいてきたらーー頭からバクリーーって怖っ
ヒロインて絶対肉食系ハイエナ女子だわ。
あれはフィクションだから楽しめるのであって、現実だったら完全アウトだよ。
『それじゃあ、どうするぅ?んー……なんか希望あるかなぁ
言ってくくればぁそれに見合ったスキルをワタクシがチョイスしてあ・げ・る☆』
また温かい光の様なものが私を包むーー
……言い方はアレだが、私を慮ってくれているのがわかるので素直な気持ちで考える。
「そうですね……せっかく魔法が使える世界なので私も使ってみたいですねーー」
『ふんふん、そうだよねぇ魔法は基本だよねぇ☆
じゃぁねぇ……全属性とぉ、あ、回復も必要だよねぇ危険がいっぱいだもんねぇ……それとぉ……』
ここからは完全に自分の思考に耽ってしまったので神様の呟きは耳に入っていなかった。
後に、貰ったスキルを確認して愕然とすることになるのだけれど、今の私はそんなことを知る由もない。