夜中のチャイム
私の過去に働いていた仕事場ではある噂があった。
夜中に入り口のドアセンサーの音が鳴る。確認すると誰もおらず、離れるとまたドアセンサーが鳴る。
話を聞いた時、私はセンサーの故障だろうと、きにもとめていなかった。
一人のご利用者様のN氏がドアの方を見てずっと手招きをしている。
認知症もあるご利用者様なので然程気にはしていなかった。
毎日N氏はドアに向かって手を振っている。
話を聞いても「おいで、おいで、何で来ないの?」と繰り返すだけ。
私が夜勤の夜中1時にドアセンサーが鳴り出す。確認するが誰もいない。
10分しないうちにまた鳴りだす。
ふとN氏が気になり居室を除くと、N氏が何か呟いている。
「私の番になりましたか?」と呟いている。
私は不安になり居室に入り、N氏に声をかけるが「どうしたの?お兄ちゃん」といつものようにニコニコしている。
N氏が眠るまで、側にいるとまたドアセンサーの音が鳴る。
急いで確認しに行くがまた誰もいない。
ドアの近くに椅子を構えて座っていると、黒い影が横ぎった気がして私は椅子から落ちてしまう。
直ぐに各居室を確認するが異常は無く、この夜勤は終わる。
未だにあの黒い影の正体や、ドアセンサーについてはわかっていない。
ただ今も夜中にドアセンサーは鳴り続けているらしい。