第7話 ぐんぐんのび過ぎちゃって!
バックから漏れ出る程の目映い金色の光を放つのは、色んな種が入った麻袋からだ。
『――植えて』
「えっ?」
『種』たちが蕾の心に直接、語り掛けてくる。
『僕たちを植えて――……』
「それであの人が助けられるの?」
『うん……。だから、だから君の手で僕たちを育てて……』
蕾がそう問うと、無邪気でそして純粋な――心が暖まるような優しい声が答えてきた。
藁にもすがる思いで蕾は種を植えるため、必死に土を素手で掘り始める。
土で服や顔、手が汚れてもお構い無しに蕾は気にせず、無我夢中で地面を掘り続けた。
すると、今度は別の声が聞こえてきた。
『こらこら、お嬢さん。それでは折角綺麗な手が汚れてしまう……。“私”をお使いなさい』
「わぁ……!」
バックの中から飛び出て、蕾の腕の中にやってきたのはあの、立派な木と鋼で出来た『桑』だった。
でも、人生で一度も桑など使ったことがなかった蕾。
使い方が分からず、桑を困ったように見つめていると、クスリと『桑』が笑う。
『大丈夫、振ってごらん――?』
「こ、こうですか?」
試しに桑をぎこちない動作で振る蕾。まだなんとも言えないへっぴり腰だが、桑は優しい声で蕾に語り掛ける。
『そうそう、うまいうまい……。じゃ、今度は“私”の歌に乗ってやってごらん?』
――ペッタンペッタンペッタン!お土をペッタン……♪
お土をたくさん、耕そぉ~♪
頭に流れる歌に乗って、桑を振り下ろしていく蕾。リズムを刻むようにどんどんとその場の土を耕していく。
「す、すごい……!」
『なんだか体が軽くて、楽しくなってきちゃった……!』
面白いように土が掘れる桑に思わず笑みが溢れる蕾。
『さぁ、今度は種を蒔いてごらん!』
『桑』の声の通りに麻袋の袋から種を取り出すため、袋を開ける。
『――僕を植えるといいよ』
ある一粒の種が話し掛けてくる。蕾が手に取るは――見たことのない黄緑色をした三日月型の不思議な種。
蕾は種を耕した土の中にと埋めると、更にその上から土を被せた。
『じゃ、今度は“オイラ”の出番だね!』
「わぁっ……!クワさんの次は、今度はジョウロさんが話しかけてきた!」
元気に赤いバックの中から飛び出てきたのは、変わった絵柄がかかれたあの、銀色の如雨露だった。
『さぁ!“オイラ”と一緒に、想いを込めて歌って!』
桑と入れ替わるに蕾の手の中にやってきた『如雨露』は、大人で紳士な感じの『桑』と違って、少しやんちゃな男の子みたいな感じだった。
蕾に声をかけてきた『如雨露』は楽しそうに歌を歌い始めた。
――お水と太陽!種たち幸せ、ぽっかぽっか♪
大きくなぁれ、大きくなぁれ♪天より高くのびろ~!
楽しく歌う『如雨露』につられ、蕾も一緒に笑顔で歌う。
「大きくなぁれ、大きくなぁれ……ッ♪天より高くのびろ~!」
くるくると回り、歌いながら心を込めて種に水をかける蕾。
すると、乾いた土の中から、にょきにょきと若い双葉が姿を見せた。
「やった……!」
土の中から元気に顔を出した芽に、喜びの声をあげた蕾。その後もどんどんと芽は伸びていく。
元気に、元気に……。
「あ、あれ……?」
種の止まらぬ成長に少し、冷や汗が止まらぬ蕾。
目覚ましい成長と言っても過言ではない程、成長していた芽は蔓となり、激しい動きを見せる。蕾も蔓から目が離せない。
ズドーン!!
『えーーーッ!!』
爆発的に成長した蔓。
蕾の目の前には空高く伸びてしまった緑の“蔓の塔”が誕生してしまった。
あっという間に伸びた芽は、下にいる蕾には先が見えなってしまう程、成長していた。