表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/22

第6話 隊長さんとの出会い

 荒れる戦場をただひらすと走り続ける蕾。


 すると、突然大きな影が蕾を覆う。――蕾の前にやってきたのは、大勢戦っている兵士の一人の足の裏だった。


 『ふ、踏まれるッ……!!』


 も、もうダメだ――!


 そう思い、蕾はぎゅっと目を閉じて、顔を腕で隠す。


 『あぁ……!こんなことになるなら、お母さんのコロッケ――……後もう一個ぐらい、お腹いっぱいだったけど食べておけばよかった……!』


 足の持主は下にいる蕾に気付かず、そのまま足を降ろす。


 死ぬと分かると途端に、不思議と家族や学校の友達の顔が思い浮かんだ。一気に色々とやり残した後悔の念が蕾に押し寄せてくる。


 だが、いつまでやってくるはずの衝撃はやってこない。


 「あれ……?」


 恐る恐る蕾は目を開けてみるとそこには先程、蕾を踏もうとしてきた兵士が亡骸となり、倒れていた。


 蕾は上を見上げる。すると、そこにあったのは白銀に輝く剣を持ち、神々しい程に光る金髪で黄金の鎧を纏い、戦う一人の戦士の姿であった。


 その凛々しい立ち姿はまるで、一人ギリシャ神話の絵から抜け出てきてしまったかのようだった。


 そんな非現実的な場面を下から見とれている蕾。すると、何やら視線を感じとった男と目が合った。


 「なっ……!?なんでこんな所に小人コロポックルが!」

 『青い瞳だ……』


 蕾の姿を見て驚く金髪の男性に対し、ぼっーと男性の宝石のように綺麗な青眼に見とれる蕾。


 だが、その一瞬の油断がいけなかった。



  「――死ねッ!!」

 「危ない!!」

 「きぁッ……!」



 いつの間にか蕾の背後に経っていた敵の兵士が、辺り構わず剣を降り下ろす――!

 その目はとても殺気立っており、冷たい目をしていた。


 「くっ……!」


 咄嗟のことで盾が間に合わず、金髪の男は自分の腕で敵兵の攻撃である剣を受け止める。

 幸い、日頃の鍛練のお陰で身についていた筋肉が敵の刃を受け止めてくれた。


 「――ハァッ!!」


 相手を押しきると剣を握る片手で、金髪の男は敵の腹にめがけて剣を突き刺した。敵の兵士である男はその場に倒れた。


 「……ッ!!」

 「ど、どうしよう……!」


 その場に剣を突き、片膝をつく金髪の男。男の腕からはおびただしい程の血が流れていた。だが、金髪の男はすぐに立ち上がり蕾を岩影まで運び、隠れる。


 「……俺の怪我のことはどうでもいいから、お前は逃げろ」

 「でも……ッ!私のせいで怪我を……」


 今だ腕から流れる血にオロオロと戸惑う蕾。


 傷の手当てをしてやりたいところだが生憎今持っているのは、種と桑と如雨露などまったく傷の手当てとは関係のない代物ばかりであった。


 「いいか?お前たち、小人コロポックル族は俺たち人間にとっては、とっても貴重な存在なんだ……。それがこんな所で見つかれば、お前は間違いなく今ここで、敵国側の人間に捕まる」


 男の体の所処には、敵の返り血がついているがそれとは反対の、海のように真っ青な色の青い瞳が蕾を見つめる。


 「自分のことは自分でどうにかする。だから、お前はお前のことだけを考えて、逃げるんだ」

 「でも……!」

 「行け!!」


 凛々しい顔立ちのせいか怒ると怖い男性。だけど、蕾は引き下がらなかった。

 確かにこの場から早く逃げ去りたい気持ちもあったが、自分を庇ったせいで怪我をした人を見捨てることもできなかった。


 「うっ……!」

 「ど、どうしたんですか!?傷口が痛いんですか!」

 「チッ……!どうやら、先程の剣の刃に毒が塗ってあったらしい……。体が、痺れて動かない……ッ!!」


 金髪の男は膝をつき、巨体が乾いた土の上にと倒れ、土埃が舞う。


 「俺もここまでか……」

 「そんな、そんなの……!嫌です……ッ!!」


 蕾は男の顔に近付き、必死に声をかけるが男の呼吸は浅くなるばかりであった。


 「いや、いやぁ……!起きて、起きてください……ッ!!」


 ぼろぼろと小さい黒真珠の瞳から涙が零れる蕾。蕾は男の頬に顔をつけた。

 だが、男の頬はどんどんと体温が低下していくのを感じる。


 『誰かこの人を助けて……ッ!!』


 心の中で思いっきり叫ぶ。

 すると、何処から声が聞こえてきた。


 『……――だよ』


 「だ、誰ッ!?」


 『ここにいるよ』


 声が聞こえたのは、あの拾った赤いバックからだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 本日はこの小説をお読み頂きありがとうございました (*´ω`*) 『評価』『感想』『レビュー』等、頂けると定期的に執筆をする際、大変モチベーションが上がり、作者は踊り狂って喜びます。お時間があればお願いいたします(笑)。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ