第3話 不思議なバック
赤いバックの中を探ってみると中から出てきたのは、色んな色と形をした種が入った麻袋に取っ手の部分が立派な木の材質で出来た桑と銀色の如雨露の3つだった。
『……農家さんの落とし物かな?』
バックの中身にあった不思議な組み合わせに頭を傾げる蕾。
どういう仕組みで出来ているのかは知らないが、こんな小さなバックにとんでもない質量の荷物が入っていた。
「どういう仕掛けで出来てるんだろう~……?」
赤いバックを色んな角度から見回してみるが、特に変わった点もなく怪しい感じもしない。
本当に何処のデパートとかでも売っていそうな、安そうな布地で出来た赤い斜めがけバックであった。
『あっ、でも夢の中だからこんなこと不思議じゃないよね!』
取り合えず落とし主がいたらすぐ届けられるよう、蕾は肩にバックをかけることにした。
食べ物探しのついでに、せっかくなので夢の中のジャングルを探索してみることにした蕾。
気の向くままに歩いていると、葉に溜まる草露の姿を発見する。
「わぁー、お水だー!」
『よかった、ちょうど喉も渇きはじめてたんだ~』
蕾は喉の渇きを潤すために草露に近づくと、そこにとんでもない自分の姿が映った。
「んっ!?」
そこに映った姿は――顔は可愛らしく団子のように丸顔で、朱色で不思議な模様が目の下に描かれた、自分の似た顔つきをした黒髪黒眼の少女がいた。
「な、なにこれ~っ!?」
本当に自分の顔か確かめるため、蕾は自分の頬っぺたを触るが草露に反射したもう一人の少女も、蕾と全く同じ動きをとっており、ショックを受けた。
「や、やっぱりこれって……私ッ!?」
よく見てみると、手も足も背も三頭身にまで縮んでいた。
『あっ、でも服はちょっと可愛いかも……』
服装もいつの間にか、まるでアイヌ民族みたいな格好をしていた。
外からはスカートを履いているように見えるが、下にはしっかりとズボンを履いており、動きやすさも重視されておりとても機能的である。
『って喜んでる場合じゃなかった!』
ハッと今の現状に気づき、冷静になる蕾。
「どうしよう……」
草露で喉の渇きをきっちりと潤した後、この訳の分からない世界の中、その小さな体で草むらを彷徨い続けること暫く、ようやく人の声が何処からか聞こえてきた。