【6月ー梅雨ー】
【 プロローグ 】
この世界には約73億の人が住んでいる。
皆、性別とかDNAは違うけど元々の能力にそんなに大した差はない。
頭がいい人もちょっと考え方が柔らかいだけ…なのに…
<<神様は常に人間に与える幸と不幸が不平等だ>>
宝くじだってそうだ、どんなにお札を出しても当たらない人と一発で当たる人がいる。
誰かが幸せになると誰かが不幸になる。
(あの子も今頃私の気も知らずに幸せな時間を過ごしているんだろうな…)
窓の外は、自分の心情を表すかのように灰色の雲で覆われている。
暗い部屋の中で私は一人静かに息を吐いた。
【6月-梅雨-】
六月はジメジメした日が多い。だから学校に行くのが億劫な私にとって、今の時期はその気持ちを余計に強くさせる。
(サボろうかな…)
…と再び寝る態勢に入ったところで、枕元においてあるスマホに着信が入った
「…もしもし…」
「光ちゃん!やっとでた!良かった、おとといから何回電話してもでないから…心配したんだよ?」
「ごめん…ちょっと気分が乗らなくて…」
「体調悪いの?ごめんね、調子悪いのに電話しちゃって」
「ううん…体調は大丈夫。」
「そっか…なら良かった。…あのね、今日学校来れる?」
「え…?」
「今日大会の準備があるんだけどね、私、急用が入って学校行けなくて…。部員のみんなに準備の指示とかお願いしてもいいかなって…」
「あぁ……うん、分かった」
「本当に!?ありがとう!すっごく助かる!!」
「うん」
「ありがとう!!じゃあ、また明日ね」
「うん…」
電話をかけてきた優奈は写真部の部長で、私は同じく写真部の副部長を務めていた。
優奈も私も2年生だけど唯一の3年生部員春人先輩の「面倒臭いな」が理由でその役割を私たちが受け継いでいた。
だけど、私は最近部活に顔を出さず副部長の仕事を放棄していた。
先輩に会わないために。
別に先輩が嫌いだからというわけじゃない、むしろその逆だ。私は春人先輩のことが恋愛の意味で好きだった。
ただ別の理由で先輩には会いたくなかった。
でも、今日はもう優奈の頼みを受け入れてしまったから学校に行かなければいけない。
私はしばらくゴロゴロと寝返りをうった後、重たい体をなんとか起こして準備を始めた。