ドラゴンを発見!
気が向いたので、書いてみました。
ーーーー風が、気持ちいい。
澄んだ空気に、微かな甘い香りが運ばれてくる。背中に当たる草花達が、ふかふかの絨毯のように心地よい。いつまでもこうして居たい気分だ。
……ん?
いや待て。
……あれ?なんかおかしくない?
どうして風が吹いているのだろうか。部屋の窓はしっかりと閉まっていた筈なのに。それと、俺は確かに昨日ベッドの上に寝ていたと思うのだが……何故草花の上で寝ているんだ?
まだ若干ぼんやりとした思考の中、とりあえず薄目を開けた周りを見た俺がまず思った事は、自分の頭はおかしくなってしまったのだろうか、という事だ。
辺り一面の爽やかな草原に、蝶達が美しい舞を披露している。都会っ子の俺には幻想的な光景のその先、俺はさらに幻想的……というかとても非常識なものを目にしてしまっていた。
……あれ、ドラゴン、だよな?
どちらかと言えば、中国などの龍よりトカゲっぽい西洋風の方の竜が、その大きな翼を広げて空を飛んでいた。
遠目から見ても、その迫力がひしひしと伝わって来る強靭そうな体躯は、まさしく物語やゲームなどに出て来るドラゴンそのままだった。
そんな突然のファンタジー過ぎる出来事に放心して居た俺は、急に横から飛んで来た物体に気付くのが遅れた。
「うぐっ……!?」
咄嗟に腕で庇い、なんとかその物体の胴体への直撃は避けたものの、庇った腕の辺りを重い衝撃が襲う。
その衝撃を利用して飛び退いた俺が、ソレが何だったのか見てみると……
ソレは、某RPGに出て来る雑魚キャラの、スライムの様な姿をしていた。
あのリアルのスライムみたいなでろっとしたものでは無く、ホイップクリームみたいにぷるるんとしている。
……これで目と口が付いていたら完璧だったのにな。
こんな異常事態時に冗談が出てくる自分に呆れつつ、注意深くそのスライム(仮)……もとい謎の生物Aを観察していると、突然無機質な音声が頭の中に流れて来た。
『スキル【鑑定】を取得しました』
それと同時に、スライム(仮)の前に、半透明のスクリーンの様なものが現れる。
突然流れて来た音声に驚いていた俺に、またスライム(仮)が襲い掛かってきたが、今度は注意していた為充分余裕を持って躱すことが出来た。
あれ? いつもより自分の動きが良くなっている気がするな。
そして、それから改めてスクリーンの様なものを見てみる。
※※※※※
スライム
Lv.4
※※※※※
……どうやらスライム(仮)はスライムだった様だ。
……いや、じゃなくて!
……おいおい、何だよこれ。
まるでゲームのステータス画面じゃないかよ。一体どうなってるんだ……
しかもそれだけじゃなく、なんかさっきからファンタジー感溢れる事ばっか起きてるし……
夢……と言うにはあまりに感覚がはっきりしているから、その線も薄いし……まさか、異世界に来ちゃった、とか? ……っていや、ないない。
っていうか、夢の次に異世界の可能性が浮かんで来るとか、俺はラノベの読み過ぎなんだろうか……?
……まぁ、異世界なんかじゃないよな。
……いやホント、違うよね?
……
人間とは不思議なもので、一度信じ、又は疑い始めると止まらなくなるものらしい。
つまりだ、考えれば考えるほど、ここが異世界だと思えてきてしまっている、という事だ。
だが、極端な話、このスライムは何かの実験で生み出されたもので、鑑定とかは俺のどこかに付けられた機械が見せたり聞かせたりしている、という可能性もなくは無い訳だ。
それなのに、何故か、俺は本能的にここが異世界だということを感じ始めていた。
••••••これで夢オチだったら完全に黒歴史モノだな。
と、まぁそんな他愛も無い?ことを考えながら、三たび襲い掛かってきたスライムをはたき落とす。あれ、なんか思っていたより力が出たな。
すると、ぐしゃっと潰れたスライムは動かなくなり、
『スキル【体術】を取得しました』
『スキル【体術】のスキルレベルが上がりました』
という声と、5回ほど
『レベルアップしました』
という声が頭の中に流れて来た。
その機械的な音声を聞き、もしや、ここが異世界であるなら、さっきみたいな事が出来るかもと思い、スライムにやった時の様に、自分を視てみる。
すると、スライムの前に出て来たように、俺の前にも半透明のスクリーンのようなものが現れた。
※※※※※
中島 樹
種族:人族
クラス:
Lv.6
HP:1431/1440
MP:288
STR:120
VIT:96
INT:132
DEX:120
AGL:132
スキル:体術 Lv.2 鑑定 Lv.1
固有スキル:完全結界
加護:創造神の加護 異世界の加護
※※※※※
「は、はは••••••」
なんと言うか、定番過ぎて笑えて来るよね。
やっぱりもうホント異世界確定でいいかな。ステータス(仮)にも『異世界の加護』とか書いてあるし。
••••••夢だったら起きた時に悶えるだけだし。
仮に異世界だとして、まぁ、来ちゃったもんは仕方がないよな。
何時までも確証の無い事を考えて無いで、先行き不透明なこれからの事を考えないと。
••••••あれ、意外とあっさり順応しちゃうんだな、俺。こんなに冷めてたっけ? 冷めてたか。
まぁ、向こうにも心残りは色々有るけど、ここでじたばたしても仕方ないしね。
今出来ることをやらないと。
よし、それじゃ、一つ一つ見ていこう。
名前、OK。
種族、これもOK。
クラス、これはなんだ? 俺のは何も書いていないんだけど。ゲームで言うなら、職業みたいなものなんだよな。ベタなのだと、神殿みたいな所で登録するとかしないといけないから書いてないとかか?
これは取りあえず保留で。
レベル、おいおい、これって、さっき5回『レベルアップしました』の声が聞こえたっちゅうことは、レベル4のスライム倒しただけで一気に5レベ上がったのかよ。美味し過ぎるだろ。そんなことゲームだったら中々無いぞ。
HPとかは、ゲームでお馴染みの能力値みたいなものを表しているのだろう。
察するに(察しなくても)、HPはヒットポイント、MPはマジックポイント、STRは攻撃力、VITは防御力、INTは知力、DEXは器用さ、AGLは俊敏、といったところか。
HPが減っているっぽいのは、さっきのスライムの攻撃を食らったからか?
あ、もしゲームみたいにレベルアップする事でこれも増えるのなら、さっきのレベルアップにおいて、実際にどれくらい変化があるのだろうか。
試しに、少しジャンプしてみた。
俺は、少し、と考えて跳んだのだが、十メートルくらい跳んでしまった。凄い驚いたけれど、意外と怖くは無かったな。
••••••やっぱり、ステータスは身体能力に多大な貢献をしているみたいだ。
地球であんなに跳べるほど、人間離れはしていなかった。重力もしっかりとはたらいてるみたいだ。
となれば、このステータスらしきものが関与しているとしか考えられない。
それと、どうやら後で、この身体に慣れる必要があるみたいだ。さっきのジャンプは明らかに身体に引っ張られていた。想定よりも跳んでしまっていたしな。
後、地味に地面に当たる裸足が気持ち悪い。俺は潔癖症なんだ(但し俺の部屋の中は除く)。なので俺は、何故か近くに置いてあった、いつも履いている靴らしき物を履いた。
勿論、ちゃんと靴の中に変な物が入っていないか確認したぞ?
ん? 何故かって? 小学1年くらいの頃に、蜘蛛を上履きの中に入れられた事が忘れられないんだよ。それから蜘蛛はちょっとしたトラウマだ。
それに、物にも使えるらしい『鑑定』スキル? のお陰で、これが『普通の革靴』と書いてあるのが確認出来たので、多分大丈夫だろう。
これで、変なイベント用の靴、という事はいくらなんでも無いだろ。
おっと、脱線したな。次、スキル。なんか、さっき取得したばかりなのに体術のスキルレベル上がってるんですけど。こんなにちょろくて良いのかな••••••
でも、異世界ではこれが普通かもしれないしな••••••
うん、やっぱり情報が不足している。
この問題は、早急に解決しないとな。
んで、固有スキル。来ましたよ〜。通称チートと呼ばれるヤツ。
見るからにチートの香りがプンプンするよ。ラフレシア並みにプンプンしてるよ。
ラフレシアの臭い嗅いだことないけど。
••••••でも、変な事して危ない事になったら嫌だし、後に回そう。
最後、加護。これだけは何故か、創造神の加護って所を見ていたら、もう一つスクリーンが出て来た。
※※※※※
創造神の加護
効果:スキル熟練度,経験値獲得量10倍 成長力2倍 スキル修得速度超UP
※※※※※
うわ〜。チートだわ〜。
••••••なんか最近こればっかり言考えている気がするのは何故か。俺はチートの宝庫か。
はぁ、全く、こんなのホイホイ出すから、最強系主人公が増えるんだよ。モブの人達もさぞ大変だろうな。
それは置いておいて、やっぱりコレの効果でレベルアップの速度が異様に速かったのだろう。それと能力値の上がり具合も補正がかかっているみたいだ。ホント、何このチート。
この世界の人(いるかも分からないが)もみんなこんな感じかもしれないので、まだ決め付けるのは早いが。
異世界の加護も、同じ様にもう一つスクリーンが出て来た。
※※※※※
異世界の加護
効果:スキル熟練度,経験値獲得量3倍 HP,MP,STR,VIT,INT,DEX,AGL2倍
※※※※※
これは、この世界にとっての異世界、つまり俺が来た地球からの加護ということかな。
これも大分チートだな。能力オール2倍になってるし。
と、ステータスを確認したところで、これからどうしようか。先ずは目標を決めていこうかな。
また気が向いたら書きます。
※追記※
次は4日後になる予定です。
本文には書いていませんが、スライムがLv.4になるのは、凄く大変な事なのです。
スライムはモンスターの中で最弱であり、当然他のモンスターになど勝てないので、スライム同士で殺しあわなければ経験値を獲得出来ません(あ、経験値システムの事まだ言って無かったわ)。
また、スライムの絶対数もそこまで多いという訳ではないので、Lv.4のスライムの出現は、まさしく奇跡だと言えるのでは無いでしょうか?
••••••どうでもいい、ですか。ま、まぁ、そうですよね。
気を取り直して、次回予告。
次回 スライム 死す(ネタバレ••••••か?)