卯月四日
桜咲く 待ちに待った日 花見の日
酒に任せて 愛せたならば
三月から待ちに待っていた。今日が、花見の日だ。
まだ満開ではないものの、桜はほとんどの花が咲いていて、ライトアップに怪しく輝いている。
昼にやる花見ならば、ただ酒を飲んで騒ぐだけだったことだろう。
周りに紛れて喚き騒いで、何もせずして終わっていたことだろう。
けれど今回は、あなたに近付きたいと思っていて、そういった目的もあるのだ。
そういったというのは、もちろん、そういったものだ。
「あの、こんばんは。こんな時間に呼び出してしまって、本当に、申しわけないというか……ありがたいというか……」
花見に誘えるくらいに、親しいところまで来たのに、なんだか上手く話せない。これじゃあまるで、初対面のようじゃないか。
こんな僕の様子を、あなたは不思議に思っているのだろうね。
ただの花見であり、それ以外の目的を持たないと思っているであろうあなたからしてみれば、僕がどうして緊張しているかなんて、不思議でならないのだろうね。
あぁ、僕ばかりが苦しいなんて、悔しいな。
酔っ払ってしまうほどじゃないにしろ、酒は飲みながらの花見だった。
そうでもしなければ、会話もできないと思ったからかな。
「あなたが誘ってくれなければ、私、こんな素敵なもの、見られなかったわ。ありがとう。今ね、変な気持ちなの。夜の桜はどこか怪しげで、私たちの友情を、恋というものに変えてしまいそうだわ」
微笑みの中で呟いたあなたは、きっと僕の気持ちに気付いていない。
気付いていないうえで、そのように言ってくれたのだ。僕だけではなくて、あなたも同じように苦しんでくれていたんだ。
「ええ、そうですね。僕たちの間で恋ができたなら、どれほど幸せなことでしょうか」
あなたが認めてくれているのなら、酔っ払ってしまうというのも、一つの手だったかな。
酒の勢いで……なんて、やはり僕には無理な話かな。




