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弥生二十七日
さようなら 涙を隠し 背を向ける
どうしてこの言葉は、こんなにも悲しく苦しいのだろう。
別れを決めたのは僕なのに。
別れも言わずに去っては、後悔するとわかっているのに。
「さようなら」
胸が痛くて、潰れてしまいそうだったけれど、僕は彼女にそう告げた。
堪えられず涙が溢れてくる。
最後の別れが、泣きじゃくる顔では嫌だった。彼女の中の僕が、泣いている顔では嫌だった。
だから涙を隠して、彼女に背を向けていた。
背を向けたままで、さようならと、冷たく言い放ったんだ。
戻ってしまわないように、間違えてしまわないように、彼女と別れられるように。
彼女の中に残る僕は、どんな姿になったのだろう?
後ろ姿だけ向けた、冷たく寂しい僕の最後の姿だろうか。それとも、彼女と過ごしていた日々の中の、嬉しくて楽しくて、笑顔で跳ね回る僕だろうか。
それとも、別れに飾り立てられた、幻想的な僕だろうか。
僕の中の彼女は、その全てを併せ持ち、どれが本物だかわからないくらいだよ。
そのまま、二人がだれなのかも、わからなくなってしまえれば良いのにね。




