弥生五日
春芽吹き 動物たちも こんにちは
暖かくなった、そう思ったら寒くなって。また寒くなった、そう思ったなら急激に暖かくなったり、暑いほどにまでなったりする。
移ろいやすいのは、秋の空ばかりじゃなくって、春の気温だってそうさ。
あっそれを三寒四温というのか。……いや、あれは冬の言葉だったような気もする。
何にしても、最近は暖かかったり寒かったりで大変だったのよ。
だけれどもね、もうやっと、本当に暖かくなってきたって感じなのかな。
だって人間の服は毎日変わっているけれど、今日は遂に、動物たちが森から出てきたようだもの。
といっても、もちろん、僕が森へ行ったわけじゃあない。
そもそも僕が森へ行ってしまったなら、当然冬眠中の動物たちに会えてしまうからね。
そうじゃなくって、動物たちに会うことができたから、冬眠が終わったんだってわかるんだろう。
動物たちは村のだれよりも正しい。
勉強なんてしなくても、いつになったら季節は春に変わった、どうしたら生きていかれて、そうした大事なことは、全て知っているんだから。
僕は動物たちに挨拶をして、春の訪れを村長さんに知らせてあげようと急ぐ。
村長さんを、冬眠から起こしてあげなくちゃいけないからね。




