63/365
弥生四日
桃色の 服を揺らした 愛らしさ
春だから、春らしい色の服を出してみたの。
桃色でフリフリした、可愛らしい服で、彼女は僕にそう言ってきた。
美しい花や穏やかなさ、陽気さなど、春を擬人化したならば、彼女が完成されることだろう。そう思えるくらいに、彼女の姿は、”春”というものの温もりを表していた。
冬に入る頃に、コートを身に纏った彼女を見たときには、冬を擬人化したかのように思えていたんだけれど。
むしろそれが彼女らしさというものでは? そうだ、きっとそうなのだろう。彼女は、季節を司る、愛らしい妖精さんなのさ。
思えば思うほどに、彼女の愛らしさは人間の持ち得る限界値を越えているような気がしてくる。
そのことに気が付いたら、なんだか急に、彼女が神聖なものにまで見えてきた。
「妖精じゃなくって要請、神聖じゃなくって申請の間違えでしょ?」
彼女に伝えたなら、そんなふうに言われてしまったけれど。




