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365個の物語  作者: ひなた
師走 幸せに包まれたまま、終わっていけるのなら、それは幸せな一年だったと言えるのでしょう。
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師走二十八日

  過ぎゆけば 想い出のみに 笑えども

     傍の涙は 偽りもなく


 家に戻ることもできず、何ができたわけでもないまま、他人のためという名で金のために働いていた日々。

 愛しい人のことを想い、懸命に、無心で頑張り続けることしかできなかった。

 あの頃の私には、だれに聞いたって、暗いとしか思わなかったろうな。

 もう一年も経つのかとも思うし、まだ一年しか経たないかとも思う。

 そういえば、一度だけ家へ行ったのだけれども、結局は会うこともできないままだった日があった。勇気が出せず、雪だるまだけ作って行ったんだよな。

 きっとあれが私の仕業だったことはわかっているだろう。

 何を思っただろうな……?

 自慢じゃないが、それなりに悲惨な感じになっていたと思うのだが。

 どうして会ってくれなかったのかと、膨れていただろうか。寂しがってくれていたとしたら、悪いことをしたと思うし、嬉しいことだとも思う。

 可愛いあの人のことだから。それを考えるだけで楽しい。

 実際、私はどんな顔をしたらいいのか、わからなかっただけなんだけど。

 意地悪だとか、ドSだとか、勝手に思ってきゅんとしていてくれたらいい。

「何を考え込んでいるのです。ねえねぇ、無視しないでもらえますか?」

「は? あ、ごめん、気が付かなくて」

「むぅ、ひどいです。私よりも大切なものがあるというのですか? もっと甘えたいのに、いけませんか……?」

 そうだ。こんなにも可愛い子なんだぞ。

「あるわけないだろ。私の愛を馬鹿にしているのかっ!」

 つい声を荒げてしまったが、顔を綻ばした姿が見惚れるほどに愛らしくて、どうしたって息を呑んでしまう。

「この、可愛い奴め」

「ちょっ、急にそんな顔をされたら、もっと好きになっちゃいますよ。馬鹿」


 一年がこれほどまでに短く、あっという間に過ぎ去ってしまったのだ。

 時間が儚いものだと感じるのだから、そうしたなら、儚いままにこの子は……

「どうしたのですか?」

 不安になって腰を抱き寄せたなら、きょとん顔で見上げられる。

「儚く美しいものが、好きなのか? 哀しげなものばかり、いつも見ているように思える」

「ふふっ。もしかして、私が儚くて、いなくなってしまいそうだとか、そういうことで不安にでもなったのですか?」

 全部がお見通しなようで、それもまた嬉しくて、私は強く抱き締めた。

 愛おしかったから、ただ触れたかったから。

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