師走二十八日
過ぎゆけば 想い出のみに 笑えども
傍の涙は 偽りもなく
家に戻ることもできず、何ができたわけでもないまま、他人のためという名で金のために働いていた日々。
愛しい人のことを想い、懸命に、無心で頑張り続けることしかできなかった。
あの頃の私には、だれに聞いたって、暗いとしか思わなかったろうな。
もう一年も経つのかとも思うし、まだ一年しか経たないかとも思う。
そういえば、一度だけ家へ行ったのだけれども、結局は会うこともできないままだった日があった。勇気が出せず、雪だるまだけ作って行ったんだよな。
きっとあれが私の仕業だったことはわかっているだろう。
何を思っただろうな……?
自慢じゃないが、それなりに悲惨な感じになっていたと思うのだが。
どうして会ってくれなかったのかと、膨れていただろうか。寂しがってくれていたとしたら、悪いことをしたと思うし、嬉しいことだとも思う。
可愛いあの人のことだから。それを考えるだけで楽しい。
実際、私はどんな顔をしたらいいのか、わからなかっただけなんだけど。
意地悪だとか、ドSだとか、勝手に思ってきゅんとしていてくれたらいい。
「何を考え込んでいるのです。ねえねぇ、無視しないでもらえますか?」
「は? あ、ごめん、気が付かなくて」
「むぅ、ひどいです。私よりも大切なものがあるというのですか? もっと甘えたいのに、いけませんか……?」
そうだ。こんなにも可愛い子なんだぞ。
「あるわけないだろ。私の愛を馬鹿にしているのかっ!」
つい声を荒げてしまったが、顔を綻ばした姿が見惚れるほどに愛らしくて、どうしたって息を呑んでしまう。
「この、可愛い奴め」
「ちょっ、急にそんな顔をされたら、もっと好きになっちゃいますよ。馬鹿」
一年がこれほどまでに短く、あっという間に過ぎ去ってしまったのだ。
時間が儚いものだと感じるのだから、そうしたなら、儚いままにこの子は……
「どうしたのですか?」
不安になって腰を抱き寄せたなら、きょとん顔で見上げられる。
「儚く美しいものが、好きなのか? 哀しげなものばかり、いつも見ているように思える」
「ふふっ。もしかして、私が儚くて、いなくなってしまいそうだとか、そういうことで不安にでもなったのですか?」
全部がお見通しなようで、それもまた嬉しくて、私は強く抱き締めた。
愛おしかったから、ただ触れたかったから。




