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365個の物語  作者: ひなた
師走 幸せに包まれたまま、終わっていけるのなら、それは幸せな一年だったと言えるのでしょう。
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師走二十七日

  春が好き 冬が好きだと 言ったけど

    伝えたい心 君が好きだよ


 春って恋の季節だって聞いたんだけど、あたしにとっての恋の季節は、間違えなく冬だよ。

 だってあたし、冬の日に、恋い焦がれ続ける運命の王子様に会ったんだもの。

 あたしの考え方を、人生そのものを変えちゃうような、大切な出会い。

 だけどあたしなんか、視界の片隅にも映っていないのかな。モブキャラクターなんだよね、通行人Aでしかないんだよね。

 大好きな春よりも、大嫌いな冬の方が好きだって言えそうなくらい、あたしのことを変えておきながら。

 だけど悔しいとも思えないんだから、惚れた方が負けってことだよね。


 そういえばね、あたし、イチゴフェアの増えてきた冬の日にいつも思うの。

 どうして春のイチゴをちゃんと見てくれないのかしらって。

 だってあたしね、今年はちょっぴりしょっぱかったけど、甘酸っぱい恋の味がする、春のイチゴの美味しさを知っているんだもの。

 冬はやっぱり寂しいわ。

 去年の冬の方が、恋の希望が大きかっただけ、春を待つ時間も楽に過ごせたってものね。

 今年の冬は、恋が破れたことを知ってしまってからなんだもの。

 好きな人の幸せを、邪魔するようなことは、どうしたってやっぱりできやしなかったの。

 会いに行こうとも思えなくて、想いを馳せても寂しくなるばかりだし。

 どうしたらいいのよ。

 あたし、冬なんて嫌い。早く春になったらいいのに。

 春にはいつもお花があたしを囲んでくれるんだもの。

 ……寂しくなんてないわ。


 深くなる嫉妬。

 寂しさが増してしまう。

「あたしはこんなに愛しているのに」

 絶対に、言いたくなかったようなことなんだけど、だけど、口から出てしまっていたの。

 本当に嫌になるわ。

 恋をしたばかりのことは、知らない感情を、優しくて幸せな知らない感情を知れた。

 時間が経つに連れて、知りたくないような感情ばかりが出て来てしまうのね。

 このままあたしはどうなってしまうのかしらん?

 春が来ても、喜べなくなっちゃったら、あたしはどうしたらいいのかしらん?

 わからないよ。

 あたしの気持ちを鎮める方法を、だれか知りませんか?


 ん、綺麗な月ね。

 寒い中に外に出るのは嫌だったんだけど、忘れちゃうくらいの寒さだって思ったの。

 それだのに、こんなに綺麗な月を魅せられたら、忘れられるわけがないじゃないの。

 逆効果だわ。あたしって馬鹿みたい。

 神様があたしに意地悪だってこと、忘れていたみたい。


 それを忘れられるんだったらば、そもそも、全部を忘れられちゃったなら楽ちんなのに。

 どうしてなの。やだよ。

 意地悪。神様ってほんとに、あたしに対して意地悪だわ。


 春を待つとは言えたけれど、でもこうしてみると、冬って案外長いものなのね。

 お花が傍にいたなら、長い時間だって楽なのかな。

 そんなことはないのかしら……。

 もうあたしは王子様に恋してしまっているんだもの。お花なんかじゃ、満足はできないのかしら。

 ねえ、あたしはどうしたら救われるのかしら。

 あたしが悪いことをしたというなら謝るから、神様どうか、あたしにも微笑んでよ。

 どうかあたしのことを幸せにしてよ。

 王子様に危害を加えてしまいそうで、それが怖いの。

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