師走二十七日
春が好き 冬が好きだと 言ったけど
伝えたい心 君が好きだよ
春って恋の季節だって聞いたんだけど、あたしにとっての恋の季節は、間違えなく冬だよ。
だってあたし、冬の日に、恋い焦がれ続ける運命の王子様に会ったんだもの。
あたしの考え方を、人生そのものを変えちゃうような、大切な出会い。
だけどあたしなんか、視界の片隅にも映っていないのかな。モブキャラクターなんだよね、通行人Aでしかないんだよね。
大好きな春よりも、大嫌いな冬の方が好きだって言えそうなくらい、あたしのことを変えておきながら。
だけど悔しいとも思えないんだから、惚れた方が負けってことだよね。
そういえばね、あたし、イチゴフェアの増えてきた冬の日にいつも思うの。
どうして春のイチゴをちゃんと見てくれないのかしらって。
だってあたしね、今年はちょっぴりしょっぱかったけど、甘酸っぱい恋の味がする、春のイチゴの美味しさを知っているんだもの。
冬はやっぱり寂しいわ。
去年の冬の方が、恋の希望が大きかっただけ、春を待つ時間も楽に過ごせたってものね。
今年の冬は、恋が破れたことを知ってしまってからなんだもの。
好きな人の幸せを、邪魔するようなことは、どうしたってやっぱりできやしなかったの。
会いに行こうとも思えなくて、想いを馳せても寂しくなるばかりだし。
どうしたらいいのよ。
あたし、冬なんて嫌い。早く春になったらいいのに。
春にはいつもお花があたしを囲んでくれるんだもの。
……寂しくなんてないわ。
深くなる嫉妬。
寂しさが増してしまう。
「あたしはこんなに愛しているのに」
絶対に、言いたくなかったようなことなんだけど、だけど、口から出てしまっていたの。
本当に嫌になるわ。
恋をしたばかりのことは、知らない感情を、優しくて幸せな知らない感情を知れた。
時間が経つに連れて、知りたくないような感情ばかりが出て来てしまうのね。
このままあたしはどうなってしまうのかしらん?
春が来ても、喜べなくなっちゃったら、あたしはどうしたらいいのかしらん?
わからないよ。
あたしの気持ちを鎮める方法を、だれか知りませんか?
ん、綺麗な月ね。
寒い中に外に出るのは嫌だったんだけど、忘れちゃうくらいの寒さだって思ったの。
それだのに、こんなに綺麗な月を魅せられたら、忘れられるわけがないじゃないの。
逆効果だわ。あたしって馬鹿みたい。
神様があたしに意地悪だってこと、忘れていたみたい。
それを忘れられるんだったらば、そもそも、全部を忘れられちゃったなら楽ちんなのに。
どうしてなの。やだよ。
意地悪。神様ってほんとに、あたしに対して意地悪だわ。
春を待つとは言えたけれど、でもこうしてみると、冬って案外長いものなのね。
お花が傍にいたなら、長い時間だって楽なのかな。
そんなことはないのかしら……。
もうあたしは王子様に恋してしまっているんだもの。お花なんかじゃ、満足はできないのかしら。
ねえ、あたしはどうしたら救われるのかしら。
あたしが悪いことをしたというなら謝るから、神様どうか、あたしにも微笑んでよ。
どうかあたしのことを幸せにしてよ。
王子様に危害を加えてしまいそうで、それが怖いの。




