如月五日
無邪気さで 君が見つめる ふきのとう
あともう少し 雪から「よいしょ」
「どうしたの?」
じーっと雪を見ているものだから、不思議に思ってそう訊ねてみる。
その場所に、何かがあるのだろうか……?
見えちゃいけないものが見えているのではないか。余計なことを考えてしまい、少し恐ろしくも思えた。
「ここに角があるの」
無邪気な瞳を僕に向けて、そんなことを言ってくる。
角っていうのは、牛とかに生えているようなあれだろうか。
もしかしたら、その場所は地獄と繋がっていて、鬼の角が見えているのかもしれない。
君が無邪気だからこそ、それが見えてしまっているのかもしれない。
そんなはずがないのに、怪談話なんかも丸っきり駄目な僕は、何を見ているのか確認することを躊躇った。
「あっ、あぁ。それはふきのとうと言ってね、角ではないんだよ」
勇気を出して確認をしてみて、その正体を確認すると、安堵の声が漏れた。
良かった。
角のように見えたから、そう言っただけだったのだ、ふきのとうを知らないだけだったのだ。
こんなに安心しちゃって、当たり前のことなのにね。
本当に角だと思っただなんて、幼稚園生の言うことに、二十六にもなって僕は何を考えているんだか。
「雪から頭を出そうと、一生懸命に頑張っているんだよ。応援してあげよっか」
「うん! がんばれ、がんばれー、ふきのとうさん!」
応援の効果があったのか、一気にふきのとうが伸びて、雪からぴょこっと出てきた……気がした。
って、それこそ怖いよね。




