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365個の物語  作者: ひなた
師走 幸せに包まれたまま、終わっていけるのなら、それは幸せな一年だったと言えるのでしょう。
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師走二十四日

  白雪が 降り積もりては 貴方への

   愛もしんしん 降り積もるかな


 まだ梅は咲きませんね。

 今年の初めの頃に、貴方に向けて書いた手紙を、今更になって貴方が見せて来ました。大掃除をしようと思って、整理をしていたら、出てきたとのことです。

 一人で見る梅の愛らしさが寂しくて、つい、手紙を送ってしまったのでした。


 そういえば、庭にあったあのセンスのない雪達磨。

 結局、確認はしていないわけですけれど、作ったのは貴方だったのでしょうか?

 他に作る人がいないものですから、それを疑いもしませんでしたね。

 確認するまでもないことですか、やっぱり。


 桃の花が咲いたときにも、まだ貴方は帰って来て下さっていませんでした。

 たった一人、一人ぽっちで桃を見るのは、梅を見るのよりも寂しさが増しているようでした。

 雪達磨を残していたのに、私に会って下さらなかったという、それが寂しさの背中を押していたのだと思います。

 春という季節は、温かいだけに、一人ぽっちが辛いものですし。


 そして忘れもしない四月の十五日。

 貴方が私を迎えに来て下さった。もう既に散ってしまった桜の下で、貴方が私を抱き締めて下さったのでした。

 大好きです。大好きです。

 本当に貴方のことを愛しているのです。

 貴方への愛を再確認することができました。


 貴方と一緒にいられるだけで、幸せで仕方がない、私がそう思っているように貴方もそう思っているようですね。

 嬉しいのです。

 二人の愛がどれほどまでに深いかが知れるというものでしょう?

 私と貴方。二人だけの世界。

 こんな素晴らしい場所が許されるものなのでしょうか?


 私たちにとっては、いつだって記念日です。いつだって幸せなのです。

 傍にいられるということだけで幸せなのですから困ったものです。

 想い合っているという信頼が何よりも大切なのです。

 不十分なところのない暮らし、本当にこのようなことが許されるべきなのか、不安になるくらいです。


 あぁ、雪が降って参りましたよ。

 雨はあんなに淋しかったのに、雪はこんなに幸せで溢れているのですね。

 ホワイトクリスマスというのでしたっけ?

 いつにも増して、幸せで優しくて、素敵な雪……なのですね。


 こんな夜遅く、出歩くことは許されないのですか。

 それとも星降る夜と同じように、貴方の傍にいるという条件でなら、それも許されることなのでしょうか。

 愛しい貴方と、美しい景色を眺めたいのです。


 気持ちが収まらないほどに、貴方への愛が溢れてきます。

 簡単な言葉に騙されてしまうくらいの間というわけなのです。

 貴方のせいですよ。

 本ばかり読んでいたせいか、適当な言葉には心打たれようがないと思っていましたのに、その自信が有りましたのに、ひどいものです。

 貴方に言われると、ベタな言葉にも騙されてしまうのです。


 あっそういえば、ストレートな言葉に弱いということに、私は気付いたのです。

 だって「えっろ」だなんて、セクハラ染みた言葉をもらうとは、思いやしないではありませんか。

 どうしてなのです。

 私が苦手なのは、貴方に、というわけなのかもしれませんね。

 それこそ、ベタな言葉なのでしょうけれど。



 って、今日はクリスマスイブなんですよ。

 過去話なんてしている場合じゃありませんっ!

「明日はクリスマス。サンタからの素敵なプレゼントを期待していろ」

 期待していたのに、何もないまま夜を迎えて不思議に思っていますと、耳元でわざと囁いて来る貴方。

 大好きな貴方の声に、私は胸がいっぱいになりました。

 素敵なプレゼント、ですか。

「期待しています。ハードルだけ上げて、がっかりさせないで下さいよ?」

「当然だ」

 自信満々に笑う貴方には、期待せざるを得ませんね。信じています。

 それに私は貴方のすることなら何もかもが嬉しいのですから。

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