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365個の物語  作者: ひなた
師走 春夏秋冬、四季を歩いてきたけれど、季節の中にやはり美しく輝いたのは……。
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師走二十三日

  秋風に 近し遠しと 嘆きては

   積む記憶さえ 零るるほどに


 思い出す秋の日。

 暑かったり寒かったりで、秋らしい気温なんて続かなかった。

 だから秋という名前の日。

 秋を求めた日、とすら言えるのかもしれないわね。


 思い出す秋の日。

 直接、自分自身の目で見てこそ輝く、鮮やかな色の木々。

 花だって、この雪だって、きっとそうなのだろう。

 レンズ越しではなくて、直接見るからこそ感じる美もある。

 なのだから、レンズを通さない姿だって見てみたらどうなのだろう。

 僕には、それをしない意味がわからないのだよ。


 思い出す秋の日。

 旅の終わりが近付いていることを実感し、けれどその気持ちが、寂しさばかりでなかったことが嬉しかった。

 今は更に終わりが近付いて、もう本当にすぐそこまで迫っている。

 寂しさばかりじゃないよ。大切な旅だから。


 思い出す秋の日。

 チョコレートを手で持っても、融けたチョコレートが指に付かない。そういったどうでもいいことを喜べた、平和を想う秋の日。

 快適な気温だった。

 寂しくもなかった。

 ただ幸せだった。秋の日。


 思い出す秋の日。

 神無月。神のない月。神無月。

 けれど届かない願いではないと、神頼みをしてしまっていた。

 結局、願いは叶ったのだから、きちんと神に届いたのだろうか。


 思い出す秋の日。

 冬に備えて、全てを消してしまおうとしていた。

 それなのに暖かさを忘れられなくて、君と出会ってしまった、君と過ごしてしまった、その夏の日の記憶を忘れたくないと思った。

 その強い気持ちは、今でも残っている。

 だから初めて、そう、今年が初めてなんだ。

 初めて見る冬は、どこまでも輝いていう。


 思い出す秋の日。

 涼しくなった過ごしやすい秋の夜長を少し過ぎて、寒くなり始めていた秋の夜。

 今よりはずっと過ごしやすかったし、どこか風に爽やかな印象を受けていたことは、今と比べられる今にしか気付けないことではあるけれど。

 秋の日には、冬に備えることでせいいっぱいだったんだ。


 思い出す秋の日。

 ハロウィンという謎の行事に警戒していた。

 南蛮文化なんて知らない。ハイカラなことなんてわからない。

 古臭いままで、新しい海外の風を受け入れようとしない僕。

 そもそもそんなのはリア充イベントだから、気に入らないだけという説もあるけれどね。

 そしてクリスマスの近い今日という日に、思うことは同じこと。


 思い出す秋の日。

 ハロウィンパーティとかいう奴に、挑戦してみたんだったわ。

 とはいっても、ハロウィンの当日は平日だったものだから、最寄りの休日を使ってということなんだけどさ。

 楽しかったよ、うん。


 思い出す秋の日。

 重なっている思い出。

 ハロウィンだって気に入らないんだから、クリスマスだって気に入らないに決まっているわ。

 次に目覚めたとき、除夜の鐘が聞けることを期待しましょう。

 うーん、それだと寝すぎな気もしないでもないけど、さ。


 思い出す秋の日。

 いろいろと融合させた、日本風のハロウィンというものが、気に入らなくも楽しかった。

 僕は僕だと強がっていることがきっと楽しかったのだろう。

 クリスマスはすぐそこ。

 同じ気分でワクワクしている今だからこそわかる。



 思い出す秋の日。

 立冬だから、冬といえば冬なんだけど。

 十一月だから、まだ秋の雰囲気のあった秋のような冬のような秋の日。


 思い出す秋の日。

 世界が白く見えて、それがどこまでも美しく思えた。

 自分が持っている感性が、日本人的であることを再確認した。

 ある意味では芸術の秋ってことかな。


 思い出す秋の日。

 何が哀しいというわけでもなく、秋という季節に哀愁を覚え、涙が零れ落ちていてしまっていた。

 寒さなら間違えなく冬の方が上なのに、終わりなら間違えなく今の方が近いのに、秋の日の方が哀しく思えてそれがまた寂しさを生んだ。

 それが悪いことだというわけではなく、ただ、なぜだか物悲しく思えた。


 思い出す秋の日。

 成人の日で久しぶりに再会して、次に会うのはいつになるかと思っていたら、今年のうちだとはまさか考えなかった。

 七五三の写真だなんて、信じられなかった。

 自分のことかのように嬉しくて、あの子たちが幸せになってくれていることが僕も幸せにしてくれた。

 やはり家族というのはどこまでも良いものだよね。

 僕は勝手に孫が産まれたように思ったけれど、あちらは僕をどう思っているのだろうか。

 また、遊びに行ってみよう。


 思い出す秋の日。

 闇の中で光を探していた。

 光の中では光が見つからないからと、君という光を探すだけのために、周りの光を闇へと変えてしまった。

 ひどく自分勝手であったかもしれないが、後悔するようなこともなかった。

 それが正しかったと信じて言える。

 それに、僕はどうしても君に触れたかった。君のことをもっと知りたいと願っていた。

 君に会いたかった。ただ、それだけだった。


 思い出す秋の日。

 色鮮やかな秋は終わって、白に包まれてしまった、秋という世界の中で、僕は何を思っていたのだろうか。

 考え思い浮かぶのは、やはりただ白さばかり。

 やはりただの白さばかりなのであった。


 思い出す秋の日。

 ドキドキで胸キュンなことがあったのよね。だから、忘れられるようなわけがないわ。

 秋の寒さに凍えて、冬みたいなイチャイチャをしたわ。

 本当の冬にはもっと寒いに決まっているのだから、もちろん、もっとイチャイチャしているに決まっている。

 あたし、心から冬が好きになれたわ。

 これもそれも大好きな彼のおかげよ。


 思い出す秋の日。

 思い出す良い肉の日。

 ちょっ、下らないとか言わないでよ! 私は真剣に考え、真剣に悩み、真剣に語っているんだからっ。

 って、思い出すと言うほど前の話じゃないんだけどねー。

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