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365個の物語  作者: ひなた
師走 春夏秋冬、四季を歩いてきたけれど、季節の中にやはり美しく輝いたのは……。
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師走二十日

  冬の日を 想う心に 風荒び

    冷えた指さえ またも恋しき


 思い出す冬の日。

 もういくつ寝るとお正月。

 今日と同じくらい、いや、もっと寒い日だったかもしれない。

 正月が過ぎ去ったばかりだというのに、次の正月までの日を、数えようとしてしまっていた。

 その次の正月というのが、今やここまで近付いているとなると、嬉しいというか寂しいというか嬉しいというか。

 とにかく嬉しいというか。

 ただこの寒い中、まだ休みに入らないのは気に入らないけど。

 寒い日と暑い日は休みを増やさなくちゃいけないと思う!

 ほんと義務っ!


 思い出す冬の日。

 寒い日に限って、俺の彼女のデレ期はやってくる。

 どういう化学反応が起こっているのか。それはわからないけれど、寒いのは苦手な俺は、それがあるから寒い日が好きであった。

 彼女が冷たいくらいなら、寒い方がましだ。

 夏場とか、暑苦しいから近付かないでって言われるし……。

 幸せなんだよ、寒い日って。


 思い出す冬の日。

 寒いのだから、絶対に外になんか出まいと思っていたのだが、楽にならない寒さを楽しくできたならと、雪だるまを作ったのだった。

 思いがけず、愛着が湧いてしまったのだったな。

 今回の冬も雪が降ったら、雪だるまを作ろうか。

 今度の子とは、一週間くらいは一緒にいられたらいいのだけれど。

 忘れていないから、安心して。

 また同じように、可愛く作ってあげるから。

 僕は君のことが好きになったせいで、冬のことも好きになってしまっているのかもしれない。

 今も雪の日を待ちわびているよ。


 思い出す冬の日。

 一日の寒暖差が物凄いだとか、そういう場所って、絶対に生きていけないと思う。

 だけど暑い日が続くだとか、寒い日が続くだとか、そういう逃げどころがない感じも止めて欲しいよね。

 九月の残暑とかそもそも二月の存在とか、暑さ十分ですー寒さ十分ですー、とにかくもううんざりなんですー状態じゃん。

 暑くも寒くもなければ良いのに。

 それはずっと抱えていた切なる願い。



 思い出す冬の日。

 バレンタインでチョコレートを渡すのは、照れくさくて、とても僕にはできなかったのですよね。

 けれど、彼に気持ちを汲んでほしかったから、誕生日という名目で彼にチョコレートをプレゼントしてやると言いました。

 本当に困りものですよね、馬鹿ばっかりです。

 僕も彼も、とんだ馬鹿ですよ。

 来年のチョコレートは、バレンタインデーにあげましょうかね。

 そうして誕生日には、何か別のものを差し上げましょうか。

 あぁ、寒い冬の日は、なんと甘いことでしょうか。


 思い出す冬の日。

 君だけは失いたくないと、君だけを失いたくないと、わがままな僕は叫んでいた。声には出せず、心の中で叫び続けていた。

 恋の不平等さに泣いていた。

 そんなことはなかったのに……。いや、反対だったから、そんなことないわけでもなかったのか。

 苦しんでいたのは、僕ではなくて君の方だった。

 幼稚な僕ではなくて、気持ちを隠して大人なふりをしていた君こそが、苦しんでいた。苦しんでくれていた。

 君のことを信じもせずに、責任転嫁までをした僕はよっぽど楽だったろう。

 今ならわかる。いかに僕が君を苦しめていたか。

 けれど今でも、どれほどまでに君が苦しんでいたかは、わからないんだ。

 いつまでも僕にはわかりようがないだろう。

 推測なんてできないほどに、君を傷付けてしまっていた僕なのだから。


 思い出す冬の日。

 バレンタインで浮かれていた頃、油断していた、インフルエンザに襲われたのだった。


 思い出す冬の日。

 インフルエンザに苦しみ、君にうつしてしまうという恐怖で苦しんだ。

 そしてお見舞いに来てくれた、その喜びに悶えたのだったな。


 思い出す冬の日。

 家族にインフルエンザをうつしてしまって、大変なことになってしまったのだ。

 僕はまだ出席停止だったとはいえ、元気になったのだけれど、僕以外の全員がインフルエンザで寝込むって言う。

 あれは本気で辛かった。


 思い出す冬の日。

 元気でありながら、出席停止だから仕方がないというわけで、学校に行きたくて仕方がなかったのに、学校を休んだんだよね。

 家族にインフルエンザをうつしさえしなければ、最高の期間だったろうに……。

 あ、間違えた。

 学校に行けないなんて、最悪だったよ。


 思い出す冬の日。

 学校に復帰。と思ったら、学級閉鎖になったんだよね。

 結果、僕は物凄く長い期間、学校を休むことになった。

 冬休みが終わって、一月後には冬休み再みたいな?

 今度の冬休みも二回あったら嬉しいなぁ、なんて。


 思い出す冬の日。

 八月の次に休みが多かったのは、二月だったのではないかと記憶している。

 今年度のインフルエンザ事情がどうなるかはわからないけれど、長期休暇が一つ増えるのは、喜ばしいことだよね。

 ごほん。今のは口が滑りましたな。

 学校に行きたくて仕方がないから、今年度はそういったことがないよう気を付けないといけない。

 結局、春休み遠ざからなかったから、わっしょいだったのは内緒。


 思い出す冬の日。

 閏年生まれの人って、年を取らないよね。

 そんなどうでも良いことを考えていた気がする。

 二月二十八日って、二月二十九日のことを考えちゃうから、逆に可哀想かも。

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