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365個の物語  作者: ひなた
師走 これが最後だというのなら、規則性なんて、いっそ壊してしまいたい。変わらないまま終わるのは、なんだか……空しいから。
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師走十四日

  夏の日は 知る絶望も 包み込み

    暑く輝き 消ゆる文月


 暑い日が思い出される。

 友情が恋愛感情に変わるのを感じ、禁忌に胸を痛めた記憶。

 冬の寒さの中で、暑い日を思い出して、熱くなってくるようだった。

 花開け花火。

 この冬の日に、あの夏の日のように。熱く。熱く。


 寒い日に胸が痛む。

 暗闇を飛び交う蛍の光とは、同じ小さな光にしても、温かみが全くもって違っているのだ。

 イルミネーションだなんて、人の手によって作られた、あまりに美しく作られているもの。

 彼女と出会ったのも別れたのも、彼女と過ごした時間は暑くて、夜になっても暑いままで、そんな夏の間だけだった。

 はっ、馬鹿らしいかな。

 何十年もたってなお、夢を忘れられないとは。


 暑い日が思い出される。

 確かにここ何年と、海なんかには行ってなかったけれど、まさか冬に来ることになるとはね。

 海の日だから海に行こうと思って、結局、海に行かないまま海の日を過ごしたこと、後悔していたんだよね。

 また来年、海の日チャレンジをしようと思ったのだけれど。

 なぜ冬に来てしまったのだろう、僕。


 寒い日に胸が痛む。

 これだけ寒いのだから、冬眠をするべきだろうな。

 そうしなければ死んでしまう。人類滅亡だ。

 というわけで、おやすみ。Zzz


 暑い日が思い出される。

 汗でべたづいて、服が脱げなかったんだよな。

 今日とかは、正真正銘will notだね。

 寒くて服を脱ぐなんて意志はとても持てない。

 冬に着替えは時間を要する。

 だって寒いんだから!


 寒い日に胸が痛む。

 海星よ。こんなにも夏らしく輝きを持っていそうなのに、どうして冬でも、そう元気でいられるのだろうか。

 水族館が、その水槽の中が、一年を通して同じ水温となっているから。

 お前はそういう冷たいことを言うのか……?

 でも冬の輝きっぽい感じの生き物って、逆になんだろうね。

 それ以前に、逆にって何が逆なんだろう。


 暑い日が思い出される。

 これから夏本番というときに、夏の終わりを想って、切なくなっていたことだ。

 今でも十分に寒いのだけれど、これからがきっと冬本番。

 冬の終わりなど想いはしない。

 それどころか暑い日を胸に思い出すとは、僕は、私の化身なのかもしれないな。

 私もまだ若いと、そういうことかしら?


 寒い日に胸が痛む。

 明るくポジティブなのが夏だとしたら、その正反対にある冬の日は、暗くネガティブなのだろう。

 特別、夏の方が好きというわけではないが、気持ちとしてわからないでもなかった。

 それもまた魅力ではあっても、冬は切ないよ。

 暗いのは、日の沈むのが早いからなのかもしれない。

 無理にそう笑って見せるが、それこそ冬がゆえの痛々しさだったろう。


 暑い日が思い出される。

 友だちと遊び回ったがあまり、後半は宿題が終わらなくて、結局は写させて貰ったんだっけ。そういえば、彼と付き合い始めたのも、夏だったな。

 あっもうすぐクリスマスだわ。彼ったら、どうしてるかしら?

 はっ! 虫唾が走るわ。

 そうよ悪い? 完全に私はぼっちだった。

 夏ぼっちだった私は、もちろん冬もぼっちよ馬鹿!


 寒い日に胸が痛む。

 冬の星というのは、夏の星よりも明るく大きく見えるのだよ。

 長い夜、空いっぱいに輝く星と、冷たく吹き抜けていく夜風。

 凍えてしまいそうなほど寒いから、動けなくなるほど美しいから、胸が痛くなるのであった。

 夏の星くらいの方が、恋らしくて、見惚れていられたのかな?


 暑い日が思い出される。

 昼間は耐えられないほど暑くて、けれど夜になると、涼しくて絶妙に暗く明るく、過ごしやすさというものを感じた。

 暑い夏の中の夜という瞬間は、昼間の暑さとも重なり合いつつ、涼しく柔らかいハーモニーを奏でていた。

 なのにどうしてなのか。

 寒い冬の中の昼という瞬間は、暖かな居場所を作ってはくれない。

 美しさを奏ですぎて、夜は、冬の夜のその瞬間は、……。


 寒い日に胸が痛む。

 見上げればそこに広がっているのは、プラネタリウムでしか見たことがないような、美しい星空なのであった。

 ああ、なんという感動だろう。

 元より星が好きで、プラネタリウムもよく見るのだが、それとは全く異なる感動だ。これだから、本物の星空というのは、美しくて困る。

 昼間でも見られる、あの創られた星空など、ただの映像でしかないのだと、その差を見せつけているようではないか。

 夏の日の僕の言葉だ。

 夢にまで見たいと願った星空。本当に美しかった。

 しかし寒いこの冬の日に、夜空を見上げてみたならば、なんという絶景であることか。

 七月の星など、七夕という飾りも含めてのこと。

 実力というものを見せつけられたようであった。

 ひどく、虚しいほど、美しかった。


 暑い日が思い出される。

 夏らしいことをしたような気がする。いや、しなかったような気もする。

 あぁそうだ、ゲームをやっていたんだ。

 じゃあ今日もゲームやろっと。

 寒いんだから、暖房付けて室内でゲームに限るでしょ。


 寒い日に胸が痛む。

 春眠、暁を覚えず。

 もうそれはだれもが共感する、天才的なことだと思う。

 夏は暑苦しくて寝ていられないし、夜が短くて、すぐに朝が訪れてしまう。辛い。

 布団にずっといられるのなら、それが許されているというのなら、冬というのもそれなりに素晴らしい季節と言えるだろう。

 冬の布団の中は至高だ。

 けれど朝、起きなければならないことを考えると、あの心地好さは地獄とすら言える。

 あっでも、そう考えたら、春も冬も同じっぽい。

 眠りが心地好くて、布団が心地好くて、目覚められな~い。


 暑い日が思い出される。

 永遠を莫迦みたいに信じてしまう。毎年、永遠を信じさせられてしまう、暑い夏の日。

 反対に、冬というのは、どうしてこうも、刹那を想わせられるのだろうか。

 これが暑さと寒さの差ということか。

 刹那の瞬間の中で、刹那の永遠を想う。

 あまりに儚い永遠だった。


 寒い日に胸が痛む。

 夏は夜というのは納得だが、冬はつとめてとは、どうにも納得がいかない。

 それが、僕にはよくわからない。

 冬だけがどうにも共感をできないのだ。

 冬らしさを纏い過ぎて、それは、それは、遠いのかもしれない。

 遥か遠くにしか見えないから、なのかもしれない。

 吹き抜ける北風が冷たいよ。


 暑い日が思い出される。

 夏の夜こそ夢を見よと、一夜の恋に胸を焦がす夏。

 けれど夏も所詮は季節の一つ。他の季節と、そう変わるはずもなかった。

 失恋を知ったとき、私は恋というものを本当に知った気がしたの。

「どうして?」

 何度も繰り返した疑問。

 そうして私は答えに辿り着いたの。

 考えるのは、愛になってからでいい。

 楽しければそれが恋だ、そう気付いたわ。


 寒い日に胸が痛む。

 星祭りの日の星は、感動的なまでにきれいだった。

 同じ星空を、他の日に見たところで、きっとあそこまできれいには見えなかったと私は思うの。

 恋い焦がれる気持ちが、私の目にキラキラのフィルターを掛けたのね。

 そうたとえば、恋する乙女には全てが輝いて見えるように。

 特に、好きな子なら、何をしていてもかっこよく見えるように。

 あの日の私はそれときっと同じ状態だったの。

 運命の恋という存在に、恋をしていたんだわ。

 恋愛というものに、恋をしてしまっていたのだわ。

 寒く冷たいこの季節だからこそ、七夕の奇跡を私は想う。

 私の気持ちを夏の日に戻してはくれないかしら、と。


 暑い日が思い出される。

 少しでも暑さを紛らわそうと、プールに行ったんだけど、身動きが取れないほど人が多かったんだよね。それで、逆に暑かったっていう(笑)

 イルミネーションに輝く街は、人に溢れている。

 だけどなんでだろう。悪い気はしない。

 寒い冬だから、人の温もりを求めてしまっているのかもしれない。

 人口密度としては、そう変わらないのだろうけれど、不思議と暑苦しいとは思わなかった。

 柔らかな電球の光が、優しく降り注いでいるようだった。


 寒い日に胸が痛む。

 貴方に会えない日が、辛く私を責め立てるようなの。

 この恋が辛いわけではないわ。

 私、貴方と紡いでいるこの恋が、幸せで堪らないの。障害があろうとも、どうってことないわ。

 それなのに、前に会った貴方とも、次に会う貴方とも遠い冬の日。

 どうしても切なくなってしまうんだわ。

 自分のことを不幸だなんて思ったことはない。だのに、私ったら、いけないわね……。

 貴方がいないと、泣き虫になるみたいだわ。

 貴方がいないと、笑顔を忘れてしまうようだわ。

 貴方がいないと、私、やっぱり駄目なのね。


 暑い日が思い出される。

 耐えられない暑さだったな、夏。

 どうやって乗り切ったんだっけ?

 え、夏、ちゃんと乗り切れたっけ?

 わからない。

 とにかく冬は、乗り切る方法として、毛布を使うしかない。

 電気の使用が制限されている以上、文明の利器に頼ることは難しそうだ。

 しょうがない。毛布の中で耐えるんだ。

 ほら、夏よりは簡単でしょ?

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