師走八日
始まりを 告げし懐かし 睦月かな
君は憶えている?
最初の頃のこと 始まりの日のこと
僕はよく憶えているよ
夢の溢れる素敵な一日だった
また来年が始まれば 同じように……
そう思ったら楽しみになって来る
始まりは終わりの先にしかない
それなら 終わりも良いものでしょ?
君は憶えている?
だれもかれも浮かれてた
大人も子どもも関係なかった
溺れてしまうほどに 幸せだった
おめでたいあの日のこと
私はよく憶えているわ
なんだかんだ言ったけどやっぱり私も
お察しの通りって感じかな
欲望を抑えきれなくて つい……
だけどそれさえ 許してくれるようだった
それくらいみんなが浮かれていたあの日
対して今と言ったらないわ
何がないってお金がないわ
無駄遣いなんてしていないつもりなのに
君は憶えている?
遊びに飽きるなどという
今にしてみれば贅沢なことをしたあの日
僕はよく憶えているよ
あの日も今日と同じように
寒くて寒くて寒くて堪らなかった
ずっと炬燵に入ってぬくぬくと
あぁ 幸せに満ちていた日
寒いのは今日の日も同じ
だのにどうして今日という日は
こんなにも忙しいのだろうか……
もう! こんなのやだっ!
君は憶えている?
怠惰の限りを過ごした日々のこと
私はよく憶えているよ?
だってあんなにも楽しい日々を
だってあんなにも楽な日々を
忘れられようはずもないから
お腹に夢が詰まって行って
どんどんどんどん膨らんで行く
現実逃避していられたあの間は本当に良かった
膨らむお腹も 夢と片付けられたのだから
モチロンイマハヤセテマスヨ?
君は憶えている?
夢の終わりが近付いていた日のこと
僕はよく憶えているさ
明日から頑張るからって
今日はまだ休みを楽しみたいって
ある意味では最も休んだ日かな
一カ月に一日くらいはほしい日だ
君は憶えている?
急に現実に引き戻されてしまった日
私はよく憶えているよ
あんな日を忘れられるわけがない
今年もそれを思うと…… なんてね
休みが始まる前に終わることを思うなんて
それで休みを楽しまないだなんて
そんなもったいないことはしないのです
君は憶えている?
だらだらした日々を楽しんでいた僕が
僕をだらだらさせていたものが
去ってしまったあの日のこと
僕はよく憶えている
可愛い君を愛でられるのは
君が可愛く僕に抱きついてくれるのは
今日だって変わらないことだけれど
正月明けというのは 日常の戻りを感じる
正月中の方が君と一緒にいられる
君ともっとイチャイチャすることができる
だけど 離れ離れになっていたところから
二人が会えるその瞬間が僕は好きなのだ
そしてきっと君もそうなのだ
待っていてくれているのが嬉しいんだよ
おかえり その一言が嬉しいんだよ
君は憶えている?
楽な日が続いたがために
過ごしていたはずの日常に耐えられず
慣れというものの恐ろしさを実感したあの日
私はよく憶えているよ
年一の忙しさにだって
慣れてしまっている今なのだから
君は憶えている?
子供たちに久しぶりに再会した日
正確にはもう子供たちではないのだけれど
懐かしい記憶が蘇ってきたあの日
僕はよく憶えているよ
あの日に蘇ってきたその懐かしい記憶も含めて
時間の流れの早さに 老いた自分に
置いていかれてしまいそうなくらいに
僕はよく憶えているよ……
昨日のことのように 鮮明に思い出せる
もう昨日のことさえ思い出すことができない
それくらいに僕が歳を取ってしまったなら
いつか忘れてしまうのだろうか
成人式と子供たち
鏡と大学の卒業式
思い比べて見比べて 不安に襲われる
時間が見た目を変えてしまおうとも
人間の本質的なものが変わりはしない
それがわかっているけれど なおも
時折 彼らに会わなければ 忘れてしまいそう
大切なことも忘れてしまいそうなのだ
だから僕はもう一度 もう一度だけ言う
”僕はよく憶えているよ”
君は憶えている?
正月の終わりを完全に見たあの日
僕はよく憶えているなぁ
忙しさに完全に慣れてしまっていた
体重も戻ってしまっていた
悪いこととは言わないけれど
完全に正月が終わってしまった
それを改めて告げられたような気分だったなぁ
君は憶えている?
夢から覚めてしまった後 その跡で
愛しいものと引き離される痛みを知った
絶望を味わうこととなった苦しい宵のこと
僕はよく憶えている
幸せを満喫し過ぎてしまったのだ
その報いが来たのだろうと思う
あの辛い気持ちは忘れられないさ
それこそ 再び幸せが戻ってでも来ない限り
君は憶えている?
恐れていた日を遂に迎えてしまった朝
俺はよく憶えている
辛かった ただ辛かった
苦しくて苦しくて堪らなかった
いつかなくなるとはわかっていたのに
どうしても幸せに縋ってしまっていた
無理なことなのに願ってしまっていた
分かっていた裏切りに 傷付いていた
少しずつなら もっと優しくなら
あんなに傷付くこともなかったかもしれない
君は憶えている?
儚い願いを諦めたあの日
僕はよく憶えているよ
夢見た日を正確には憶えていない
けれど諦めた日は正確に覚えている
わかっていたことを思い知らされること
それほど辛いことはないのだと知るね
君は憶えている?
諦めたことを追い掛けてしまったあの日
僕はよく憶えているよ
諦めたつもりだった 諦めたと思っていた
それなのに 体は勝手に動いていた
脳は勝手に期待をしてしまっていた
そうして裏切られて傷付いた
素直なのか 学習しないだけなのか
すり減っていった僕の心を慰める手段はない
君は憶えている?
今年一年間が 平和に終わるようにと祈りを捧げた
神さまに祈りを捧げたあの日のこと
わしはよく憶えているさ
だってわしにとってみれば 唯一の日だからな
その日のためにわしはいると言っても過言じゃない
村民たちが今年を平和に過ごせたこと
今年の村はきちんと豊作で会ったこと
どちらもあの日のわしのおかげだと思うと
誇らしく思えてならないものだ
君は憶えている?
溜まっていた仕事と格闘していたあの日々
私はよく憶えているよ
なんなら デジャブってるくらいよ
本当に年末年始は忙しいったらない
もしかしたら今も地獄の鬼がビックリ状態かも
君は憶えている?
もうただの日常と化していたあの日のこと
私はよく憶えているね
楽な日々を知ってしまったから
日常に戻されたことが 地獄にも感じられた
けれどそれさえもう慣れてしまっていて
正月を忘れ始めていた…… そんな日々の中の日
今はもっと忙しい日々を過ごしている
だけど正月を忘れないのは
過ぎたものではなくてこれから来るものだから
近くて遠い正月ではなくて
本当に近くにある正月を前にしているからだと思う
君は憶えている?
特に寒くなったあの日のこと
僕はよく憶えているな
だって雪が多くはない地域だから
わざわざ休みでなくなってから降る
雪の意地の悪さを憎んだはずだよ
それを忘れるだなんてとんでもないさ
寒いのは嫌だったというのと
どうせなら雪遊びしたかったというのと
とにかく想いが溢れそうだったんだから
君は憶えている?
降り積もっていた雪が固まって
地面を氷らせていたあの日のこと
そう 滑って尻もちをついてしまったその日のこと!
私はよく憶えているわよ
当然でしょ? 恥ずかしくて堪らなかったんだもの
自分でも予想外だったわ
警戒はしていたし気を付けてはいた
だから驚いちゃったんだから
恥ずかしくて堪らなかったの 本当なのよ?!
君は憶えている?
寒さに震えながら宿題と戦ったあの日のこと
僕はよく憶えている
指の冷えがひどくて
文字なんて書けたものではなくて
恨みを通り越して呆れたね
先生は馬鹿なのだろうかと
君は憶えている?
覚えているわけ……ないよね……
僕はよく憶えているよ
君の記憶の中に僕がいなくとも
僕が君のことを忘れることはない
だけれど心のどこかでは思う
いつか君が僕を選んでくれたなら なんて
君と温もりを分かち合えない
もう冷えてしまったこの指に想う
君は憶えている?
一緒におしくらまんじゅうをした日のこと
私はよく憶えてるよ
心も体もポカポカするみたいで
とっても楽しくて幸せだったんだもん
君は憶えている?
手袋をプレゼントしてくれた あの寒い日のこと
僕はよく憶えているよ
嬉しくて嬉しくて
初めて寒さをさえ愛おしく思えたよ
あれから随分と関係も進んだことだし
その 君から持ち出してくれた あれだし……
きっかけというか…… なんというか……
忘れられるはずのない大切な日
それを君に押し付けるつもりはないけれど
僕はいつまでも大切にしたい記念日だよ
これからもずっと一緒にいようね♡




