霜月二十八日
いっそなど 止まる時計に 涙落つ
自分でも驚くべきことだったのだけれど、ぽたり、私の頬を涙が伝い落ちていったのである。
そのとき、私は初めて気が付いた。そうだ、私は寂しかったのであると。
今でも貴方のことは大切であるし、その気持ちは永遠に変わらないという自信がある。あまりに突然に終わりを告げた、貴方と過ごした時間は、いつまでも美しい想い出として私の中に残り続ける。
悲しんでも仕方がないことだから、悲しむまいと目を逸らしていた。
しかしショックというのはあまりに大きいもので、私には、やはり受け入れることが出来ていなかったのだろうか。
自分でも知らないくらいの心の底で、深く深く私は傷付き悲しんでいた。ずっと寂しかったし苦しかった。
今でも貴方がいないということが信じられないのだ。
あの日、貴方と一緒に私を守ってくれ、その結果、壊れてしまった懐中時計。
それなら直すか捨てるかしたらいいものだが、とても私には出来なかった。時間ならスマートフォンで見られる時代なのだから、わざわざ修理することもないと理由を付けていたが、そうではない。
貴方の存在が幻ではないということを、証明してほしいのだ。
貴方との想い出がぷっつりと途切れてしまった、哀しいその瞬間のまま動かないこの時計は、本物の時計よりも私の中の時間を正確に教えてくれているのではないかとすら思える。
やはり私は貴方なしでは生きていけないのね……。
いっそのこと、私の時間もこのときに止まってしまえばよかったのに、なんてね。
貴方が命懸けで守ってくれたものを、無駄にするつもりはないのだけれど、少しばかりそう思ってしまう。
だって貴方と離れ離れでは、一人で生きていたって楽しくなんかないんだもの。
手の触れられない場所へと一人で消えて行った。貴方は卑怯な人だ。




