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365個の物語  作者: ひなた
霜月 これできっと終わりだから……
323/365

霜月十九日

  指先が 震えて触れて 熱くなる

   すっかり冬と 笑みの広がり


 肌が出ていたのは、顔と指先くらいのもの。

 温かい恰好に身を包んで、それでも寒いねと笑い合っていたくらいなのだから、極限まで露出はなくしていた。

 女の子は、冬でもミニスカを履いているだなんて、とんだ偏見だわ。

 寒いものは寒いのだし、厚着くらいしたいに決まっている。

 細かい外見なんて気にして、寒いのに耐えているだなんて、そんなの馬鹿らしい。

 手袋を忘れてしまったことを後悔して、指先の寒さに震えていると、隣に座った男性がにこっと笑顔を向けてきた。

 この男性というのは、あたしの彼氏である。

「寒いね。おまえのことは俺が温めてやるよ、くらいのことを言えたら、君は僕のことを好きになってくれるのかな?」

 柔らかい笑顔でそのようなことを言う。

 この言葉からもわかるだろうけれど、あまり、男らしいと言ったようなタイプではない。

 地味な方ではあるが、素材はとても格好がいいし、何より優しい。

「そんなこと、言わなくたっていいわ。あたしね、もう既にあなたのことが好きだもの。そうじゃなかったら、男女交際なんてするわけないでしょ?」

 あたしが笑顔で返せば、何を驚いたのか、びくっと彼は体を震わせる。

 その拍子に、彼とあたしの指が触れてしまって、彼は更に驚いて硬直してしまったし、あたしもなんだか恥ずかしくなって、自分でも顔が赤くなっているだろうなってわかった。

 うぅ、熱い……。

 とっても寒かったのだから、熱いのはいいことかもしれないけれど。でも、恥ずかしいよ、馬鹿。

 図らずともって感じだけど、あなたはあたしのことを温めてくれたわ。

「こういうのって、すっかり冬って感じで、悪くはないね。ちょっと、ドキドキするかも」

「なるほど。それもそうかもしれないね。冬は寒いから好きではないけれど、こうした、冬ならではのドキドキって言うの? それに、寒い冬には体を温めようとして、自然と距離が近くなるし」

 無意識なのか大胆な彼。

 あたし、どうしたらいいのかな?

 照れる頬を顔で隠せば、「肌色が全くないな」って彼が笑った。

「手袋もしたら完璧だね」

 なんて言うものだから、何かと思ってみれば、可愛らしい手袋を彼は差し出してくれた。

 あたしが手袋をしていないのを見て、忘れたのだとすぐに気付いたようで、いつの間にか買ってくれていたらしい。

 少しも気付かなかったわ。

「ありがとう。あなたと一緒なら、寒い冬も、幸せで暖かい季節として、過ごせるような気がするわ」

 あたしが笑えば彼も笑って、もう冬ってなんて最高の季節なのかしら。

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