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365個の物語  作者: ひなた
霜月 これできっと終わりだから……
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霜月十五日

  流れゆく 時の経つのが 早すぎて

    終わりゆくのも 仕方なきかな


 出会いは僕が二十四歳のとき。今が三十八歳だから、十四年前のことだ。

 あの頃は僕も若かったし、この子たちに関しては、まだ幼い子供であった。

 今だって、僕にとっては子供のままに思えてならないのだけれど、本当に年齢としても子供らしい頃だったのである。

 けれど時間は過ぎ去って、去年、十四年前に出会った六人の子供たちは、立派に成人を迎えた。

 今年の一月に、僕は成人式に招かれ、久しぶりに再会をしたのだった。

 それからはまた、会わない日々に戻っていたのだけれど、驚くべきハガキが僕のところに送られてきた。

 そのうちの一人からのものだった。

『七五三の写真です。あたしの娘、小さい頃のあたしにそっくりで、とても可愛いでしょう? いつか、見に来て下さいよ。おじちゃんが子供に優しくて、面倒見が良いことを、あたしほど知っている人はいないと思うから、こう頼むのです。あたしは馬鹿だから、こういう手紙の書き方はわからないけれど、どうしてもおじちゃんには書きたいって思って、いろいろ教えてもらいながら書きました。変だったらまた、あの頃みたいに笑ってね。バーカって、そう言ってくれたら、あたしもバーカって絶対に返すから』

 小学生の頃から、勉強が得意ではないと言っていた女の子だった。

 どうやら、既に結婚をしていて、それどころか娘がいて、その娘は今年で三歳を迎えるのだという。

 驚くべき情報が満載だった。

 ハガキに映っている、女児の写真を見てみれば、本当に小さい頃の彼女にそっくりである。可愛らしく、少しばかり、生意気そうなところもまた可愛らしく……。

 写真が載っているその下には、インターネットに載っていた文を、そのまま書き写したのかと言うほどにありふれた文が書かれていた。

 彼女の不思議なところは、それとは別に手紙を書いてくれたということである。

 ハガキだけでなく、手紙を送ってくれて、そこにはより彼女らしい言葉が書かれていた。

 一生懸命になって書いてくれたことがわかる。

 本人も言っているように、勉強は得意でなかったようだが、彼女は本当に優しい子だった。

 本当に彼女は優しい子だったな。

 彼女が母親だなんて、その娘が羨ましい。きっと良い子になるのだろうな。

「年上に対して、バーカだなんて言うもんじゃないよ。バカって言ったら自分がバカなんだからな、バーカ」

 ハガキに対して、昔のように悪態をつき、ぼそりと呟く。

 仲良くしていたとはいえ、僕にとっては何でもない。もう十四年も前に出会い、一緒に遊びはしていたけれども、何年も会うことがなかった。

 そんな近所に住んでいた子供が、幸せになっているということが、こんなにも嬉しいだなんて思わなかった。

 幸せになってくれているということが嬉しくて、視界が滲んで来るだなんて、我ながら笑えて来るよ……。

 バカみたいだな、僕。

 まだ独身のおじちゃんは、心の中でぼやくしかなかった。孫が産まれたかのような気分だよ。

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