霜月十四日
風呂などは どうかと君の 尋ねるは
寒く温か 熱く涼やか
下心。そうとしか、私はこの場を表す言葉を知らない。
「一緒に温泉にでも入らないか?」
あなたは私のことをそう誘った。
別に私は自分のことを可愛いとは思わないし、特別、私の裸に価値なんかがあるとも思えない。
なのだから、普段だったらば、「それは素敵ね」とでも言って、賛成してしまったに違いない。
そういう意味では、これもあなたの優しさと言えるのだろうか。
あなたは、だれから見ても明白なほど、わかりやすく鼻の下を伸ばしていた。
「何か良からぬことを考えているのね。目的は温泉じゃないんでしょう?」
私が尋ねてみれば、これまたわかりやすく、あなたは目を逸らした。
ギャグマンガ宛らだ。
もはやあなたの横には、ギクッという文字が見えそうなほどであった。
「やはりお前に隠しごとは無理と言うわけだな。温泉に行きたいと思っているのは本当なのだから、それ自体が、嘘だというわけではない。温泉も目的の一つだ」
そう言ってから、あなたは一息、大きく息を吸う。
「けれど、真の目的というのがまた別にある。ポイントは、一緒に、というところだ。お前なら気付いてしまったことだろう。俺はお前と一緒に、温泉に入りたい。簡単に言えば、お前の裸が見たい」
清々しいほどに、怒る気さえしないくらい、はっきりとあなたは言い切った。
呆れてものも言えない。
けれど私があなたのそういうところに惹かれているのだと、あなたは知っている上で、そんな言い方をしたのだろう。
温泉、かぁ。悪くない。
「わかったわ。正直に言ってくれたわけだし、一緒に温泉に入るというのは、私も魅力的なことに思えるもの。それで裸を見られるかどうかはともかく、ね」
微笑んでみせた私に、あなたはにかっと明るく笑う。
「寒くなる季節を、温泉は温めてくれる。それはいつだって涼しげで、冷めたお前の心を、熱くしてくれるものでもあるのだろうか」
かっこつけてあなたは言う。
いつだって涼しげで、冷めているように、あなたの目に私は映っているの?
不思議な言葉に思えたけれど、素直に私を想ってくれているのがわかって、それが私の心を温かくした。
温泉なんて行かなくたって、私は……
この言葉を素直に言えるのは、いつのことになるのだろう。




