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霜月九日
何がとも 想うでもなく 時の去る
物悲しけれ 涙の落ちぬ
どういうわけなのだろうか。
特別、何かがあっただとか、そういうわけではないのだ。少なくとも、そう、そのきっかけとなるようなことは、きっとなかったはずなのだ。
ならば唐突に、なんの脈絡もなく、私がそのようなことを言い出したのか。
どちらかといえば、そういうことの方がまだ近いかもしれない。
理由があるだとかそれほどのことではない。あまり難しいことを考えているわけでもない。
ただ、冷めゆくこの季節に、そう思ってしまったというだけ。
もしかしたら、思うとも言えないようなものなのかもしれない。
本当に何を考えていたでもなく、ただ物悲しく思えてしまって、涙が零れ落ちてしまっていたのだ。
この瞬間だけ、全員が同じ時間を生きていられたような、そんな気がした。




