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365個の物語  作者: ひなた
霜月 始まりの終わりを飾る白
310/365

霜月六日

  寒々と 白々揺れる 花落つる


 花も、葉も、なくなっちゃって、寒々しい季節になってしまったわね。

 寂しい感じしかしなくって、本当にやな感じなんだから。あたし、やっぱり冬は嫌いだわ。

 白々しいわ。

 この景色の白さが憎い。だって彼があたしに言ってくれた言葉が、嘘なんだって、そう思わせてくるみたいだから。

 あの素敵な冬を思い出してしまうんだもの。

 だけど彼が儚く美しい表情をしていたのは、恋をしていて、待ち人がいたからなのね。今なら、その相手もわかっているのよ。

 あたしには手の届かない存在だってこともわかっているのよ。

 本当にやになっちゃう。

 こんなのって、嫌なものだわ。

 花がひらりと落ちていく。

 素敵に咲いていた、あたしの傍に咲いてくれた、ちょっとばかり怖いけれど、あたしにとっては優しい花。優しい花、曼殊沙華。

 彼岸花って言うから、お彼岸みたいで、だけどとっても素敵な花なのよ。

 彼を想いつつ、いつものあたしの場所の、すぐ傍にいてくれた曼殊沙華に、この想いを少し分けてあげたの。

 そうしたらね、曼殊沙華の色が変わっていったのよ。

 不思議であたしビックリしちゃったわ。

 彼のように真っ白だった花が、あたしのように真っ赤に染まっていったの。

 不気味ね。それに、素敵よ。

 彼はこの花を見てくれるかしら。見たなら、どう思ってくれるかしら。

 そう楽しみにしていたのだけれど、彼が花に近付くのを、警戒心の高いあのイケメンは許さなかったわ。自分が傍にいなくちゃなんて、何よ、見せ付けているつもりなの?

 彼は男の人じゃない。完璧だって思うけど、イケメンでも所詮は男だわ。

 だったら、選ばれるべきは、女の子のあたしだって思うのに。

 女の子ってだけで、優位に立っていると思っている、その時点であたしは負けているのかしら。

 もう、考えるだけで本当に嫌よ。

 こんなあたしの想いが、またも花に宿ってしまったのかしら。

 驚くことに、まだ咲いてくれていた花が、散って落ちてしまったの。

 唯一、まだ残っていてくれた、まだあたしの傍にいてくれた、たった一輪の花が散り落ちてしまったの。

 寒々しいわ。白々しいわ。

 この寂しくて冷たい関係が、あたしは苦しくて堪らないの。

 こんなことなら、恋なんてしたくなかった。

 こんな気持ちになるのなら、それなら、幸せなんて知りたくなかった。

 あたし、あたし……。あたしには、春の花だけでそれで十分だったのよ、なのに、なんでなのよ……。

 冬が近付いて来るって、気分が悪くなっちゃって、本当に駄目ね。

 また花が咲く、あたしの好きな春がやってくる、それを待つとするかしら。

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