霜月六日
寒々と 白々揺れる 花落つる
花も、葉も、なくなっちゃって、寒々しい季節になってしまったわね。
寂しい感じしかしなくって、本当にやな感じなんだから。あたし、やっぱり冬は嫌いだわ。
白々しいわ。
この景色の白さが憎い。だって彼があたしに言ってくれた言葉が、嘘なんだって、そう思わせてくるみたいだから。
あの素敵な冬を思い出してしまうんだもの。
だけど彼が儚く美しい表情をしていたのは、恋をしていて、待ち人がいたからなのね。今なら、その相手もわかっているのよ。
あたしには手の届かない存在だってこともわかっているのよ。
本当にやになっちゃう。
こんなのって、嫌なものだわ。
花がひらりと落ちていく。
素敵に咲いていた、あたしの傍に咲いてくれた、ちょっとばかり怖いけれど、あたしにとっては優しい花。優しい花、曼殊沙華。
彼岸花って言うから、お彼岸みたいで、だけどとっても素敵な花なのよ。
彼を想いつつ、いつものあたしの場所の、すぐ傍にいてくれた曼殊沙華に、この想いを少し分けてあげたの。
そうしたらね、曼殊沙華の色が変わっていったのよ。
不思議であたしビックリしちゃったわ。
彼のように真っ白だった花が、あたしのように真っ赤に染まっていったの。
不気味ね。それに、素敵よ。
彼はこの花を見てくれるかしら。見たなら、どう思ってくれるかしら。
そう楽しみにしていたのだけれど、彼が花に近付くのを、警戒心の高いあのイケメンは許さなかったわ。自分が傍にいなくちゃなんて、何よ、見せ付けているつもりなの?
彼は男の人じゃない。完璧だって思うけど、イケメンでも所詮は男だわ。
だったら、選ばれるべきは、女の子のあたしだって思うのに。
女の子ってだけで、優位に立っていると思っている、その時点であたしは負けているのかしら。
もう、考えるだけで本当に嫌よ。
こんなあたしの想いが、またも花に宿ってしまったのかしら。
驚くことに、まだ咲いてくれていた花が、散って落ちてしまったの。
唯一、まだ残っていてくれた、まだあたしの傍にいてくれた、たった一輪の花が散り落ちてしまったの。
寒々しいわ。白々しいわ。
この寂しくて冷たい関係が、あたしは苦しくて堪らないの。
こんなことなら、恋なんてしたくなかった。
こんな気持ちになるのなら、それなら、幸せなんて知りたくなかった。
あたし、あたし……。あたしには、春の花だけでそれで十分だったのよ、なのに、なんでなのよ……。
冬が近付いて来るって、気分が悪くなっちゃって、本当に駄目ね。
また花が咲く、あたしの好きな春がやってくる、それを待つとするかしら。




