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365個の物語  作者: ひなた
霜月 始まりの終わりを飾る白
305/365

霜月一日

  冬を待ち 冬に想いを 馳せるよに

    染まる純白 十一の月


 これから訪れる冬という季節に恋い焦がれているような、可愛らしくも幼気な恋心のような、そんな心地がするのであった。もちろん、実際に恋をしているだとか、そういうわけではない。ただ十一を刻むこの月に、私は、そのような思いを感じ取ってしまうのであった。

 冬というものは寒いものである。

 四季がある日本に住んでいたなら、だれだって、それくらいのことは知っていることだろう。わざわざ言葉にしなくとも、わざわざ教えてなどくれなくとも、だれもがその経験から知っていることなのだろうと私は思う。

 なのだから人は秋という季節に快適さを覚えるし、春という季節に安心を覚える。冷たいような、寒いような、冬という季節を、最も好きなのだと言い切れる人が少ないせいもあるだろう。

 私は、その”冬”が好きである。秋やら春やら、好きと答える人の多いそれらの季節とて、別に嫌いというわけではない。しかしそれよりも、それよりも私は、冬を選びたいと思うのだし、冬が好きなのだと思う。それと、これだけ冬をと言っていれば、大体は分かるだろうと思うけれど、一応は言っておきたいと思う。

 夏は嫌いだ。そうして、夏を好きというその人の子とも、私は好きとは思えない。

 寒さのせい。霜が降ったりなんだりと、穢れた嘘は許さないとでもいうような、かつ全てを嘘に覆ってしまいそうな。

 寒さのせい。景色はどこを見ても純白に輝いていて、どこまで美しく輝くつもりなのだろう。

 雪だとか、そういうわけではないというのに、どうにも強い冬らしさというのが流れ込んでくるのを感じずにはいられなかった。これが冬なのだと、夏場にこれを見せられでもしたのなら、冬なのかと信じてしまいそうなほどである。

 始まる真っ白な世界。始まる真っ白な季節。冬が訪れて、銀世界に包み込まれてしまう前に、また違ったこの白さという場所に、この白い場所にいつまでもいたいと思うもの。

 どこまでも白い世界で私は瞳を閉じた。白が更なる白に染まっていく、白く広がっていく白が、私は好きなのだった。

 寒さのせい。錯覚を起こしてしまっている。きっと。

 寒さのせい。続いてくれよと、終わらせたくはないのだと、……あぁ十一の月。

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