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365個の物語  作者: ひなた
神無月 散れ、ただ紅く。
293/365

神無月二十日

  温もりを 求めて淡い 夢を見る

    幸せな冬 二人きりの冬


「お腹が空いた」

 貴方が呟いたので、私は少し悪戯をしてみたくなりました。

「それでは、私のことをお食べになりますか?」

「良いのかっ! 食べさせてくれ。いただきまっす!」

 しかしちょっとした悪戯のつもりでしたのに、押し倒されてしまって、驚かずにはいられないではありませんか。

 そうしてちゅっと唇を啄まれてしまったのですから、戸惑わずにはいられないというものです。

 揶揄ってやろうと思いましたのに、私の方が恥ずかしくなっちゃって……

「お口に合いましたか?」

 もう限界で、これ以上は保たないのに続けてしまうくらいだった。

「あぁ、最高の美味だよ」


「寒いですね」

 私が呟くと、貴方は悪戯っぽく笑いました。

「それじゃあ温めてやろう。胸に飛び込んでおいで」

「良いのですか? 温めて下さい。熱く蕩けさせて下さい」

 仕返しとばかりに、私も彼の悪戯に返しましたら、また押し倒されてしまったのだから困ります。

 もう、この人、欲求不満なんですか?

「温かいか?」

「えぇとても、とても、体が奥底から温まってきます」

 今年の冬は本当に幸せになれそうです。幸せで、いられそうです。

 二人きりで過ごしていられるなんて、二人で温め合えるなんて、最高の季節ですよ。


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