神無月二日
過ぐ日々が そんなに儚い ものならば
永遠なんて 望まぬものを
やっと咲いたと思ったのに、花はもう散ってしまうんだね。
(一瞬だけ輝かせて、残酷にも時間は過ぎていってしまうのか。散りゆく花を見たあの日からも、随分と過ぎてしまったものだ)
待っていたものであるからこそ、呆気なく終わってしまうのが、ひどく悲しく思えてならないのだよ。
(あぁ、何もかも、呆気なく終わってしまうのだ。どんなに楽しみにしていようと、待ち望んでいようと、待っていた時間に比べて、楽しい時間というのは短いものだ)
咲き続ける花などないと、そんなことは、だれだって初めからわかっている。すぐに散ってしまうことくらい、花が咲く前から、ちゃんと僕は知っていた。
(知っていたからといって、簡単に諦めることなどできようか。簡単に割り切ってしまうことなどできようか)
けれどもその儚さからなる美が、こんなにも悲しさを帯びているとは、……知らなかったんだよ。
(僕は花が一瞬で散ってしまった。その刹那の短さも悲しいものだけれど、それよりも、更に時間が経つことにより、散っていった花のことさえ忘れてしまうのが、僕は悲しく思えてならないよ)
悲しくて辛いような、そんな美しさだというのなら、最初から悲しむ準備で散り際を見よう。
(悲しみが永遠でないということが、良いことなのか……悪いことなのか……。都合良く忘れてしまえるのは、とても楽なことだよ。そうかもしれない……けれど)
そう思えるくらいに、僕は強くなったはずだけれど、心のどこかで望んでしまっていたんだ。この花が、ずっと咲いていてくれたなら、永遠というものが存在したなら、と。
(喜びも悲しみも、花も、人間も、何一つとして、永遠に続きはしない。永遠というものは存在しない。だからこそ、大切な人には、悲しみ続けてほしくはない。けれどね、忘れられてしまうのは、……辛いことだよ)
春の陽気に冒されてしまったのかもしれないね。
(暮れゆく秋に、哀愁が募ってしまっているのかもしれないや)
はぁ。こんな気持ちになるんだったら、永遠なんてもの、望まなかったものを。
(はは。こんな気持ちになるんだったら、何もかも、過ぎ去る刹那よりも早く、忘れてしまえたなら)
卯月十八日より。




