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365個の物語  作者: ひなた
長月 月を見上げて
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長月二十六日

  花弁が 落ちゆくような 儚さに

   重なる紅葉 君の横顔


 紅葉が見たいと、そう言われたものだから、私はすぐに調べて用意をした。

 より安全に、より美しい紅葉を楽しめる場所を探した。

「実際に見てみますと、想像していたよりも、もの寂しさを感じさせますね。あぁ、そんな悪いものでもないと、そう思いたくて来ましたのに、なんだか逆効果だったようです」

 嬉しそうな微笑みで木々を見上げつつ、愛しい彼はそう呟いた。

「ただ、美しさはやはり間違えありません。決して寂しいだけではなくて、その美しさというものも、きちんと抱えているようで、……安心しました」

 彼の言っている言葉の意味が、全て私が理解しているとは言いがたい。

 半分、いやむしろ、そのほとんどが、私にはわからないことなのだろう。賢いふりに逃げて、剣を振るった私とは違い、本当に賢くて、天性の才能を持っている上に努力を重ねているのだから。

 わかっていたかはともかく、私は彼の言葉を咀嚼して、ぎゅっと軽く抱き締めた。

 何があっても壊してしまうことはない。何があっても守ってあげられる。

 それくらいに、軽く抱き締めて、包み込んだ。

「貴方に言われたとおり、厚着をして来ましたよ?」

 私の胸の中で頬を膨らませてみせる彼は、可愛らしくて美しくて、それなのにどこか……儚さもあるようで。

 紅葉は花のように儚く散るとはいうけれど、私の胸の中にいる、この人もそう思えるというもの。

 本人はその美しさに、気付いてもいないようだけれど。

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