長月二十四日
宵闇や 届かぬ想い 月光
御簾の遮る なよ竹の君
曇っているのかしら。それとも、今日は新月なのかしら。
とても雲が見えようとも思えないほどに、全くの光が届かないくらいに、今夜は暗かった。暗くて、暗くて、反対に気分が明るく晴れやかになるくらいに、真っ暗なの。
彼と一緒に夜空を見上げたかったのだけど、それはあたしには無理ってことかな。
もしかしたら、あたしの王子様である彼と、一緒に月を見る人は、他にいるのかもしれないわ。
そういうわけで、神様はあたしにそこから引き離してくれたんだわ。
きっとそうよ。傷付かないようにって、あたしのために、そうしてくれたに違いないの。
もしだとしたら、とんでもなく余計なお世話ね。
そんなことをするくらいだったらば、ほんの少しだって、あたしにチャンスをお与えになってほしいものだわ。
どうしてなのよ。
寂しそうで、優しくて、哀しそうで、温かくて……。
初めて彼に会ったときに、あたしは新しい世界が見えたの。
一目惚れって言うのかしら。それから、今までのあたしからは考えられないくらい、彼のことだけを考えるようになったの。
それなのに、初めて会ったあの日より、もっとずっと前から、彼には心に決めた人がいたというのでしょう?
それが雨降るあの日の完璧イケメンなのか。あたしの知らないだれかなのか。
細かいことはわかんないし、わかりたくもないけど、彼の表情を見たら、嫌でもわかっちゃうじゃないの。
最後に会った、彼の幸せそうな表情を見たその瞬間、胸がきゅっと締め付けられるようだった。
その意味が知りたくなくて、知りたくて、夏のあたしは春を思い出していた。
けれど秋が訪れて、消えて行った夏という季節に、やっとわかってしまったのよ。
嫌でも、わからなくちゃいけないって、神様が思い知らせてくれたのかもしれないわね。
最初からどこか違うところを見ているとは思ったけど、それが彼の魅力だと思っちゃったから、まさか想い人を見る瞳だとは思っていなかったの。
これが失恋という気持ちなのね。
月も見えないくらい夜には、どうにも哀しいことばかり考えてしまう。
こんなときに、彼が現れてくれたらな、なんてね。
きっと今日もまた、完璧イケメンのあの人に、綺麗な微笑みを向けているのよ。
あたしに見せてくれる微笑みとは違う、幸せや喜びを感じさせる微笑みを。
月に帰るかぐや姫を見送る人々は、今のあたしのような、こんな気持ちだったのかしら。
手の届かない遠く離れた麗人。忘れられようもないほどに大好きなのに、絶対に触れることさえ許されない。
一度だってその顔を見せてくれなくて、御簾から姿を見せてくれたそのときは、月に帰る別れのとき。
それを考えると、あたしの方がまだマシなのかしら。
一緒にいて、話をして、綺麗な顔を見ることもできていたんだもの。
だからこそ手の届かないという事実は、重く感じられるところもあるかもしれないわね。
「もう、やだよ、あたし」
お花もあたしを励ましてはくれなくて、今日のあたしはひとりぽっちだった。




