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365個の物語  作者: ひなた
長月 月を見上げて
266/365

長月二十三日

  この日ごと 寒くなりゆく 秋の日や

     好きになりゆく 長き夜にて


 私は冬が嫌いです。寒いのが苦手ですから、冬など好きになれようもありません。

 けれども、一人で越えた昨年の冬、貴方からの手紙もあって、少し冬を嬉しいものに思えている節もありました。

 今の私はといえば、どうでしょう。

 もう一人ではなくて、隣に貴方はいて下さいます。

 それこそどのようなときであっても、必ず私の傍にいて下さいます。

 幸せが過ぎて、気温が下がっていくというのに、私の熱は上がっていくというものです。ただでさえ貴方のことが愛おしいのに、これ以上に、好きになってしまうのですよ。

 本日は秋分の日。やっと、昼と夜とが同じ長さとなる、つまりこれより先は夜の方が長い季節となるのですね。

 寒いのは好きではありませんが、夜は好きな方です。

 少なくとも、朝や昼よりは好きといえる時間帯でしょう。

 暗闇に包まれていたら、何をしても私でないようで、許されてしまうようで、それが私にとってはすごく楽なことなのです。

 ですから、夜が明けなければ良いのに、なんて思ってしまうところもあります。

 話が随分と逸れてしまいましたね。

 最終的に何が言いたいかといいますと、私は、貴方と温もりが共有できる今ならば、冬も好きになれるということなのですよ。

 長い夜の間、ずっと貴方と体を重ねていられるのです。

 そのような季節をどうして嫌うことができましょう?

 この美しい秋の日を、どうして嫌うことなどできましょう?

「薄着で外へ出るなと言っただろう。具合を悪くしたらどうする。それに、もし万が一に外に人がいたとして、そんな姿を見たら……興奮するだろ」

 軽く散歩へ行っていただけなのですが、ひどく心配した様子で、貴方は仰りましたね。

 その喜びを考えたなら、私の中に、貴方を心配させたいという気持ちは、少なからずあったのかもしれません。

 貴方には悪いですけれど、それがどれほど私を悦ばせることか。

「私に興奮するのなんて、貴方くらいのものですよ。ちなみに私が誘惑するのも、貴方だけですから。ただ、寒かったのは確かです。温めては下さいませんか?」

「反則だろ、そんなの……。本当に、誘うのもほどほどにしろよ」

 貴方に抱き締められると、一気に温かくなりました。

 体だけでなくて、心も温かくなったのです。寒さも冷たさも冷えた心も、全て吹き飛んでしまうような、貴方の温かさでした。

 このまま腕の中に包まれていたい、私は思わずにいられません。

 ですから貴方の仰るとおり、それが”反則”だとわかっていても、誘うようなことをしてしまうのです。貴方が逆らえないことを知っているから、そうしてしまうのです。

 品は足りていないでしょうが、最も効率的であることを私は理解してしまっているのだから、逃れられないのです。

 つまりはきっと私も貴方と同じことなのでしょうね。

 野生動物みたいなものなのですよ、あぁ、本能に身を委ねてしまうのでしょう。


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