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長月十五日
安らぐは 秋の夜更けの 虫の声
昼の日差しも 忘れ得るかな
夏の虫の声というのは、実に五月蝿く鬱陶しいものなのに、秋の虫の声というのは、どうしてこうも風流なものに感じられるのだろうか。
まだ昼間には暑さも残っているけれど、陽が沈んでしまったなら、涼しく過ごしやすいものだ。少なくとも、蒸し暑さ、というものはない。
それにしても、心の安らぐような、美しい声である。
こんなにも美しい声で鳴く虫がいるのなら、他の虫も、これを真似て美しい歌声を披露してくれたなら良いものを。
暑苦しい昼間の日差しだって、これほどまでに涼やかな夜があったなら、忘れてしまうこともできるのだろう。
忘れてしまうこともできるのだろう。




