睦月二十一日
震える手 君に届かぬ 指なれど
一人温め 君を待ちける
寒い。寒い。
けれど、君がくると思うと、寒さもいくらか耐えられるような気がした。
まぁ、本当に君がくるかどうかは、わからないんだけれどね?
大丈夫。これくらいの寒さ、どうってことない。
君の温もりを想えば、寒さなんて吹っ飛ぶだろう。
そう思ったのだけれど、体は心よりも言葉よりも考えよりも、ずっとずっと正直で、手が震え出していた。
「あっ」
”きた!”
この気配は間違えない。
君のことをずっと見ていたんだ。
気配だけで、君だってわかるくらいに……。
「ごめんね。ちょっと遅れちゃった。待った?」
「ううん、大丈夫」
「嘘! こんなに手が冷えちゃってるじゃない。手、繋ごう? 温かいよ?」
今日こそは、話し掛けてみようと決めた。
だけれど何をどう言えば良いのかなんてわからない。
そもそも、君が僕のことを知ってくれているのかさえ、わからない。
だって君は今日もまた、僕ではない男に駆け寄っていくのだから。
手なんか繋いで。
僕は君の吐息にも爪にも髪の毛にも、触れたことがないというのに。
そんな男のどこが良いっていうのさ。
いつか君が僕を見つけてくれることを信じて、僕は自分の手を擦り合わせる。自分の右手と左手とで、発生する熱が、温かいのがなんだか憎く思えた。
君が手を握って、温めてくれることはまだないけれど、今はこれで良いさ。
まだ今は、これで良いのさ……。
だけど僕は君のことを待っているよ?
信じてるから。信じて、待ち続けているから。




