文月十日
見上げれば 眩いほどの 星々に
言の消ゆるよに 夢を見ゆかな
見上げればそこに広がっているのは、プラネタリウムでしか見たことがないような、美しい星空なのであった。
ああ、なんという感動だろう。
元より星が好きで、プラネタリウムもよく見るのだが、それとは全く異なる感動だ。これだから、本物の星空というのは、美しくて困る。
昼間でも見られる、あの創られた星空など、ただの映像でしかないのだと、その差を見せつけているようではないか。
どう言ったら良いのだろうな。
美しいだとか、幻想的だとか、そういった言葉でしか僕はこの光景を言い表すことができない。
けれどそんな言葉では、ほんの少しも、欠片さえもこの魅力を伝えることができていないのが、痛いほどにわかるんだ。切ないほどにわかる。
実際に見なければ、言葉では伝わらないものというものもあるのだと、そう認めざるを得ない。
こればかりは、どうしようもない。
それに今、僕はこの星空を説明しようとしているが、本来ならばそれもするべきではない、できるべきではないのだろうこと。
僕の伝えんとしていること、これではわからないかもしれないが、きっとこの場にいたならば、だれだってそう思うことと思う。
発しようとしていた言葉も、消えて行ってしまうような、眩しい星空。
この輝きの前には、強いのに儚いこの星空の前では、何もかもが消えてしまう。消えなければいけないというような、使命感に囚われるというところもあるかもしれない。
今の僕だって、そうだ。
夢の中かと思うけれど、想像力の限界をも超える美。
あぁ、素晴らしいものは夢のようと思うものだが、あまりに素晴らしいと、反対に現実であると思えるものだな。
たとえ夢でも、もう一度この景色を見ることができたなら……。




